IF夢想譚(番外最終話) ダンジョン最奥で再会?
――あるかもしれないけれど起こらないはずの未来。お互い錯綜する境界線の先――
博多と呼ばれる地域は県内の鉄道ターミナルと空港までを内包する九州の都市だ。
アジアの玄関口であり東京23区と横浜・大阪・名古屋・札幌に次ぐ人口を誇る街。
西に隣接する中央区はビジネス街の赤坂と屋台名所の中州や天神としても有名だ。
その西が大濠公園であり著名な軍師黒田官兵衛の嫡男長政が築く福岡城外苑になる。
2023年1月23日16時56分07秒の局部的な地震で誕生するダンジョン。
大阪靭公園【始まりの迷宮】筆頭に国内八ケ所で福岡武道館はダンジョンの入場口。
――時は巡り2037年時点で最深とされた六十四階層で予期せぬ事故が発生する。
勢い任せで攻略を進める著名なAランク探索者たちが複数行方不明になったらしい。
パーティー数名が妊娠休業中である【スプリング・ウインド】現状は四人編成だ。
迷宮エレベータで六十層までショートカット。苦心してたどり着いた最深部の出口。
「とりあえず出口は同じみたいだけど。こっから未知の領域……って変わんないね」
頬をかく仕草までわざとらしい男みたいな長身痩躯で軽鎧の女が前衛職リーダー。
「力こそパワーみたいなおバカちゃん。暗殺特化の猫娘はいなくても問題ないよね」
冷めた口調の割に中身が優しいチャイナ衣装の長身女性は風魔法と功夫で達人だ。
「とりあえず危ない未来視なんて見えないよ? この先妙に不透明すぎるんだけど」
どう見ても子供にしか見えない金髪の長耳ロリエルフ女が誰よりも長生きらしい。
「あんたたちさぁ……探索者協会直々依頼。ご指名なんだからもうちょっと心構え」
ため息をつきながら警戒を怠らず万一に備えて魔素を集めながら前方を索敵する。
境界超越者……ダンジョンを攻略して時空間ごとジャンプした人々の総称になる。
2030年の樺太ダンジョンから因果率を無視して跳躍した場所が別世界の大阪。
『運命の人がいるなら傍に行きたい』そんな願いを酌まれて邂逅できたジロウくん。
世界間の転移で捻じれた時空と差を埋めようと選択した前世界の博多ダンジョン。
偶然とダンジョンを生んだ誰かさんの導きで新たな未来を切り拓いた世界線になる。
それ以上でもないし境界超越者だから特別な線引きやメリットがなかっただけだ。
わたしたち四人組はAランクの探索者パーティーが《スプリング・ウインド》だ。
数時間の探索で到達できる洞窟ダンジョン。最奥部で人型モンスターみたいな反応?
「奥から人型モンスターの集団来襲? みんな気をつけてよっ」迷わず大きく叫ぶ。
ちょっとだけ先行するリーダーのケイとチャイナドレスのユリが同時に振り返った。
「「了解」」「ちょっと待った? モンスターじゃないみたいね」最後はリーフだ。
背後の金髪ロリエルフが大きな笹穂耳で捕捉した情報。おかしいしあり得ないよね。
「とりあえず様子見!【
「おいおいおいおい。モンスターから攻撃魔法飛んできた。そんなもんあり得ねぇ」
迷宮の最奥部から瞬時に反射された火炎で【氷の飛礫】魔法が消されたみたいだ。
同時に響いた言葉はもちろん意味のある日本語……どこか懐かしく感じられた男声?
まさかまさかまさか。もしかしてなんだけど……響いた声あれはいつか見た夢……
――時は戻り2030年。最深とされる六十四階層で予期せぬ事故が起きたようだ。
勢い任せに攻略を進めた実績ある探索者パーティーが行方不明をくらませたらしい。
ここは大阪靱本町で【始まりの迷宮】ダンジョンと呼ばれる場所の六十四階層だ。
ダンジョンに対してのアドバンテージでイニシアティブを握る日本は復活できた。
2023年1月23日16時56分07秒の局部的な地震でダンジョンは誕生した。
靭公園に隣接するビルから勢いで調査に訪れたパーティーリーダーが城佳二くん。
彼の姪っ子兼相棒の英田永依と二人が初の迷宮入りで救助した獣人が宇佐美ココだ。
佳二くんのリアル先輩にして性転換した美女……警察官僚の大喜多要が補佐役だ。
控えのメンバーは都度変更されて魔法を使えるオレとフォロー役に先輩レージさん。
ダンジョン攻略のパーティー編成上で六人が理想的とされるから仕方がないよな。
救助する意味で身体のデカさと力自慢が優遇されたのかオレたちが選ばれたようだ。
テニスコートの入口まで令司さんに同伴した姐さんがニヤリと意味深げに笑った。
「三十路まで遊び倒したクズ男にかけられた呪い(笑) いよいよ終わっちゃうねぇ」
わけもわからず首を捻って悩んだが昔からあるおバカなネタに引っかけたあれだ。
三十路まで童貞を守ると魔法使いになれる例の都市伝説と真逆の状態がオレになる。
リリと別れたダンジョンの出口でカードにびっくり……炎熱魔法スキルだったよ。
おかげで先輩や姐さんに大笑いされちまった。勃起できない代わりに得られた魔法。
現在から数えて七年前になる。七年後の世界から逆転移したらしい魔法少女リリ。
ミナミの路地裏で邂逅して数日間車両旅……原爆ドームダンジョンに消えた少女だ。
実際のところは十八で成人だったらしいんだが謎だけ残して姿を消した運命の女。
ファム・ファタールには複数の意味がある。いい意味なら運命で逆の意味が悪女だ。
迷宮のエレベータで六十層ショートカット。苦心してたどり着いた最深部出口だ。
「とりあえず出口は同じ。ここからは未知の領域……っていつもと変わんないよね」
頬をかく仕草までわざとらしい小柄な佳二くんの右脚はAIが制御して稼働する。
「巨乳看護師と頭でっかち女いなくても問題ないし。あーしがんばっちゃうからね」
口が悪くても優しい少女……じゃない。超美形のアイドルに進化した英田永依だ。
「今回は探索者協会からのご指名なんだよエー。もうちょっとマジメにやってくれ」
元来のキマジメさが際立つウサ耳獣人の女の子でこちらも超絶美形の宇佐美ココ。
「あんたたちホント変わんない……協会直々指名なんだからもうちょいマジメにね」
ため息をついて警戒を怠らず万一に備える美女にしか見えないのがカナメさんだ。
「まぁオレたちゃ保険みたいな荷物持ちだからな。ジロウも気楽にやってりゃいい」
二メートルの高身長イケメンで医学博士パチプロだとか笑えない九頭竜令司さん。
数時間の探索で到達した洞窟ダンジョンの最奥部から人型モンスターらしき反応。
「最奥から人型モンスター集団来襲? みんな気をつけてっ」大声でココが叫んだ。
ダンジョンの攻略パーティーは六人が理想とされるから迷わず前方に跳びだした。
迷宮通路の奥から間隙を空けずに飛来するのは親指大もあるらしい氷の飛礫だった。
「おいおいおいおい。モンスターから攻撃魔法飛んできた。そんなもんあり得ねぇ」
頭で考える前に手のひらを大きく拡げながら左腕を突きだして火炎と相殺させる。
ちょっと待ってくれよ。行方不明パーティー……魔法スキルはいなかったはずだ。
そもそも氷魔法なんて相当レアなスキル。探索者協会にも未登録だからあり得ない。
魔法を使える相手はモンスターじゃねぇ。通路の最奥部からなんで人間が現れる?
呆然とするオレに駆け寄る姿。瘦身小柄で……真っ白な外見は在りし日の少女だ。
「ジロウくんジロウくん……正真正銘ホンモノのジロウくんだぁ。やっと逢えたね」
リリに追随する少女が三人。人間に見えない笹穂の耳が際立つのはエルフちゃん。
軽鎧が際立つ赤髪のノッポさんと黒いお団子頭のチャイナドレスっぽい魔法少女だ。
とんでもないことが起こったよ。世界……いわゆるリアルが変化した瞬間になる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます