IF最終話 涙堪えてどんでん返し?

「なんとなく理解できたけど……次元を超えた先にある七年後世界でリリは十八歳。

この世界でドッペルゲンガーみたいなリリが樺太にいるなら十一歳……お子ちゃま」


 いやいや勘弁してください。ロシア領土にいる相手なら永遠に会えるはずはない。

それにリリと同位体の女だったとして二人は別人格の完全に違う存在で意味がない。



「そだよね。同一個体じゃないにしても樺太にいるはずのその子は同じリリだよね。

ボンキュッボン無理だけどさぁ……リリが大人だったらそそられちゃったりする?」


「その質問には…………拒否権を発動させていただきます。以下質問すべて却下で」

「なんだかなぁ……わたしあっちでもそれなりに珍しい色合いの美少女なんだよね。

まぁジロウくん日本人っぽさがないし同類項のイケメンさんだからアレなんだけど」


 そう指摘されるとマジ同種かもしんない。アジア系には混じれない異民族だよな。

それに大人のリリが目前に現れたら速攻でコナかけて口説き落としたかもしんない。



【世界ト履歴ノ修復ヲ確認】――またまた頭の声と同時に目前で巨大扉が稼働する。


 あわてて自分のカードもタッチパネルに触れさせてからリリの背後を追いかけた。

ダンジョン……定義上は地下迷宮だから一本道だ。ひたすら奥に進むしかできない。


 リリも無駄口を叩かずに現れる巨大アリやミミズにムカデを相手に無双してるよ。

異世界ファンタジーみたいに魔法詠唱をすることなく……手のひらを向けるだけだ。


 手のひらから線状の水っぽいビームが噴出させるだけでモンスターを弾き跳ばす。

あれやこれやと追随するだけでなにもできずに洞窟を抜けた先……巨大扉が見えた。


 巨大扉の向こう側に……ダンジョン一層のボスがいるんだろうなとワクワクする。



【世界転移ノ少女ニ質問ダ】いきなりの急展開じゃね?【転移ノ先ヲ選択ガ可能ダ】


 これは千載一遇で最後のチャンスってヤツかもしれない。リリに伝えてみようか。

「リリの希望を邪魔するつもりはない……それでもこっちでオレと暮らしてほしい」


 前で微動もしないリリが顔をしかめて悩みながらゆっくり自分なりの言葉を紡ぐ。

「ちょっとだけ時間をちょうだい……答えがでたら意思にしてちゃんと伝えたいの」



【世界転移ノ少女ニ了解ダ】これってのぞんだ展開か?【転移ノ先ハ脳内デ指示ダ】


 機械音が了承してくれたのか同時にこちらを振り向いたリリがゆっくりと近寄る。

「うんちゃんと決めた。ジロウくんには感謝しかないし伝えておきたい言葉はある」



 元がもじりなのか省略した愛称か嘘八百かわからない理を二乗する名乗りのリリ。


「ジロウくんの記憶ちゃんとあるうちに姿を見せるつもりだけど無理かもしんない。

だから……保険として契約しましょう。お手つきの代わりになる初めてのチュウで」


 言葉に併せるように小さな手のひらがオレの頬を挟むと強引に口づけされました。

ニタりと笑いながら舌先を巧く使って歯茎の裏を責めたててくる半端ない攻撃力だ。


 背丈が自分の胸に満たない少女に負けたままじゃ終われないから反撃を意識する。

契約ギアスが無事に完了っ。いまはお別れなんだけど再会できたら続きをやろうねっ!」


 あせるように手のひらで胸を突かれ飛び退るとリリの体はすべて七色に包まれた。

『いつか……またぁ』消える間際に動いた唇の動き……あの先は永遠にわからない。




 小さく手を振りながら白黒のワンピースに黒いリュックを背負う少女が泣き笑う。

わからない状況から始まり謎が解決することもなくダンジョンから姿を消した少女。


 並行世界の概念が空想上のSF的理論か量子力学の領域になるかどっちでもいい。

こんな狭い島国でも夜の界隈でオカルト現象は頻繫に起こりおかしなやつらが集う。



 少女が夢じゃないことだけは間違いないし忘れないようにトラウマまで刻まれた。

ほろ苦い記憶とか束縛なんてスイーツな話じゃない……あれから勃たなくなったよ。


 憂さ晴らしにでかけた同業知人のショットバーで時々見かけるピアノ弾きの女だ。


 雰囲気を盛り上げていざ鎌倉じゃない……本番で人生初めての役立たずだったさ。

酒の問題じゃないしどんなシチュエーションでも無理ゲーだったぜ……正しく呪い。



 初めて目にしたしおらしさと雰囲気に流された結果の確信犯だろうディープキス。


 すぐ傍らで遠い場所にいるはずのリリが大人になった未来予想図に想いを馳せた。

大人になった魔法少女に再会できるまでデバフ……呪いをかけられるのも悪くない。




追記)ラストシーンは次回への伏線なのか? それとも違う結末が迎えられるのか?



 それでも苦笑いしながらすべてを受容することで以前の生活は無事に取り戻せた。

男の機能を失くして姐さんと先輩にガチ爆笑されたお詫びがトワイライトの再開だ。


 失恋の味もしらない小僧なんてバーテンダー未満と呼ばれた見習いから卒業した。

オープンからマスターを目にした客はいなかったがようやくここで正式に誕生する。


 三津寺にあるバー・トワイライトではお客様の来店を心よりお待ちしております。



追記オチ)※こっちは完全ネタに全振りしたオチになります(※他意はありません)



 ピアノ弾きの女……あれ以来飲み仲間に変わったアイツもまともじゃなかったよ。

それなりに売れっ子ちゃんで有名な匿名ミュージシャン。それに中身は男なんだぜ。


 LGBTQの時代を迎えてもサイボーグ009や600万ドルの男はあり得ない。

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