第20話 ジャグラーで勝負開始?

「ねぇねぇジロウくんリリちゃん聴いてないよ。可愛らしいあの娘はどんな関係?」

 マジもんのヤンデレじゃねと思考を放棄したくなるぐらいリリの機嫌がヤバいよ。


「いやいやこれってヒカルが犯人だよな。無垢なリリに適当ぶっこいてんじゃねぇ」

「えっあたしウソなんてついてないもん。シイタケちゃん可愛くて人気演者よって」


「ふーん」真実を伝えないことでリリの本性まで垣間見えた……これは演出だよな。


 にやりとおかしな笑みでカメラを回すハナビストさん……恐らくあれは確信犯だ。

ならラストのネタバレから笑いに落とそうとするヤラセ演出みたいな仕込みだよな。


 前日はゲーセンでレバーオンのビッグ……モーニングを大花火に仕込んだはずだ。

711枚チャレンジの一発成功はリリの引き。もしくはリリのスター性なんだろう。



 銭形と吉宗の勝負は演出せずに……ドローから結果的にヒカルと打ち解けたんだ。

youtubeにアップロードしてから切り抜き動画を投稿すればトピックになる。


 なるほど裏面で誰かの指示があるかないのかは別にしても予想できることはある。

リアルに呼吸して可愛い声で動き回りここにいるだけで奇跡みたいな美少女なんだ。


 そこにライバルみたいな相手を登場させる煽り演出……これから出玉勝負かもな。

なるほど追加のカメラマンまで派遣して……リアルタイムでライブ動画配信らしい。


 うかつなことを話せないし……後からリリに謝るとしてもノリで行くしかないな。

完全ノープランで事前打ち合わせなしなんてデタラメな実戦動画なんてガチすぎる。


 こんなことがディレクターの判断で認められるはずもないから見えない裏がある。



『いらっしゃいませいらっしゃいませぇ。お越しいただきありがとうございまぁす。

本日の弥生町タイガーは正午オープンです。全台大解放でただいま開店致します!』


 在りし日の昭和……盛況だった時代のパチンコ業界で新装開店じみた煽り文句だ。

凄まじい音量の軍艦マーチ……BGMが流れ始めると半世紀ほど時間が逆戻りした。


 それでも一般のお客さんは若者たちが十数名……まぁノリとか雰囲気は悪くない。

小さな正面扉の前に連なるように並んだ一般の客から先行して入場させるみたいだ。



「打ち合わせ一切なしの完全ノープラン……リアルタイムにライブ配信みたいです。

えーっとジャンバリのジロウ……昨日のゲーセン大好評につき来店実戦になります」


 ハナビストさんの抱えるカメラ目線で伝えるとなぜかリリが驚いた顔つきになる。


「演者さんは昨日同様にジャンバリ所属……元アイドルで有名な虹色ヒカルちゃん」

「元がいらないです。動画を見てくれるアナタのアイドル虹色ヒカル頑張りますね」


 さすがにプロとしての演者歴が長いから瞬時にノリ全開でこっちに合わせてくる。


「酔いつぶれたジロウさん……二人で抱えるのがホントに大変だったんですからね。

おかげでこんな可愛い魔法少女リリちゃん……同じベッドで一晩中すごしちゃった」



 リリの背後に移動して同時に左右から首に腕を巻きつける仕草がやけにあざとい。

「えぇっと撮影してたんだマジでびっくり……魔法少女リリちゃん。よろしくです」


 おかしな展開にリリも戸惑いながらゆるゆり路線で不満はないのか流れに乗った。


「本日初参戦の可愛い縁者さんが登場です……必勝本ライター。椎茸かおりちゃん」

「皆さんこんにちはぁ。よくわからずに急遽呼ばれました必勝本のシイタケでぇす」


「こんな感じで始まりました……前振り打ち合わせ一切なしの来店実戦になります。

オープンしてお客さんほとんど入場されました。これから我々ですがどうします?」


 おかしな雰囲気で頼れる相手はそれなりにつき合いの長いヒカルちゃん一択だよ。



「ジャンバリと必勝本……本日は合同取材なんでシイタケちゃん優先のジャグラー。

六時間制限で台選択はジャグラーの一択です。コンビ対決がいいんじゃないですか」


「コンビで対決ってアレだよな……ヒカル&リリチーム対シイタケちゃんにオレ?」


 またまた絶妙すぎる組み合わせだが……それでも絵面的に悪くないかもしれない。

ハナビストさんをチラ見すると小さくうなずいたからとりあえず流れに乗ってみる。


「それなら台選択がもちろん先だけど……みんな同じ機種から始めるのがいいよな。

アイムジャグラーEXとファンキージャグラー2。新台のGOGOジャグラー3だ」



「GOGOランプ光ればボーナス確定のジャグラーですけど中身はぜんぶ違います」

 もちろん即座のツッコミはジャグラー愛があふれるシイタケちゃんの一言だった。



 それも当然で初代ジャグラーは1996年に設置された大昔の4号機基準になる。

基盤封印されたはずのノーマルAタイプがメーカーの関与しない裏モノ連チャン化。


 パキパキにクレジット連チャンして一撃で数千枚獲得する機種に生まれ変わった。

当時珍しかったコントロール方式のリール制御になるからハズレ目でペカりもある。



 初代ジャグラーから始まり翌年ジャグラーVで2001年のGOGOジャグラー。

ハイパージャグラーVからのジャグラーガールでGOGOジャグラーVと進化した。


 4号機はファイナルジャグラーがラストで5号機の時代がアイムジャグラーEX。

アイムジャグラー7からラブリージャグラーAでジャンキージャグラーだったっけ。


 クラシックジャグラーからアイムジャグラーSPでハッピージャグラーVだよな。

初代マイジャグラーからのアイムジャグラーAPEXでミラクルジャグラーになる。


「5号機のラスト機種がGOGOジャグラー2。6号機はアイムジャグラーEXだ。

まぁ無難すぎる選択だけど……6号機が三機種。まず最初はアイムEXから行こう」


 シンプルな初代ジャグラー後継機アイムEX。これから始めるのが理想的だよな。

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