第17話 お互い逃げ切るはずが?

「リリちゃんまたまたやっちゃったの? ダメダメ銭形警部もたまにやれんじゃん」

 あざとすぎる台詞に合わせてウインクするリリはカメラに向けた目を逸らさない。


 令和時代でお馴染みのアニメ映像……叫ぶ銭形がルパンを追いかけて逃げられる。

だがしかしレバーオンのタイプライター演出で復活する当たりはビッグ確定になる。


 レバーオン時にヒカルの吉宗はキーンと鳴らずそのままスルーして回転を始めた。


「やっぱ連チャンないよねぇ。ここから193ゲームの天国当たりに期待しよっか」

「フフフーンッ♪」お返しみたいなリリの挑発は軽くいなして全集中するヒカルだ。



「魔法少女リリちゃんだからね。敵対するなら情け無用に蹴散らしちゃうだけだよ」

 ボーナスゲームを消化中のリリが完全イミフな宣戦布告を行うヤバい件について。


「そんな風にふざけた態度ばっかとっちゃうと運のカミサマに見放されちゃうから」

 一回り近い年齢差があるヒカルは負けず嫌いなお子ちゃま相手の反応になるよね。


「それっぽい言い回しってアレだったっけ……運命神の後ろ髪はつかめないヤツだ」

 タイミングよく巡ってこないからチャンスは逃さずに勢いでつかみ取るしかない。


「運命の神さま……選ばれるぐらいに愛されたリリちゃんだからダイジョウブィっ。

栄養がぜんぶお胸にいっちゃう恵まれた女なんかにぜったい負けないよ。あれっ?」



 いきなりボーナス中に疑問符がつくリリの発言で銭形をチラ見するとビックリだ。

まさかまさか驚きのジャック外れじゃん……あれは数千分の一ぐらい激レアフラグ。


「すんげぇマジかよ。15枚のロスになるがビッグ確定で1ゲーム連しちゃうから」

 ビッグ後の三ゲーム連チャンは三割起きるが数千回に一度ぐらい激レアフラグだ。


「えっえっえっ……これで1ゲーム連チャン。リリちゃんまたやらかしちゃった?」

 びっくり眼のリリが異世界転生してやらかした系の主人公あるある妄言を吐いた。



「まぁ……やらかしっちゃぁやらかしかもしんない。リリが引き強すぎて笑えない」

 ほんの一瞬だったけど……言葉を失うぐらいの衝撃だった。それぐらいは珍しい。


「無敵のリリちゃんお胸のデカさじゃかなわないけど引きと運なら負けないからね。

これもビッグなんだからまだまだチャンスあんだよね?」リリの目が真剣になった。


 うんうんと首を縦に振りながらビッグ後三ゲーム連チャンスを背後から見つめる。

今回は自転車で追いかけたからチャンスアップだけど失敗から復活して告知される。


「うっしゃぁ。またまた連チャンだよっ!」満面の笑顔になり三連7を狙うリリだ。



 半ば以上確信しながら中リールに同じく7絵柄を狙ったが停止位置は上段だった。

「あれれれれ」なぜか首を傾げるリリに当たり前の事実としてちゃんと伝えようか。


「ビッグ三連……一撃二千枚放出すれば大したもんだ。今回のそれバケ確だからね」

「バケ……ってあれかぁ。黒いBAR絵柄だから出てくるメダルちょっぴりなんだ」


「そうそう。ビッグは超かんたん目押しの711枚だけどバケは104枚で終了だ」

 ビッグ中はボーナスゲームが三回になりレギュラーならもちろん単発終了になる。


 それでも銭形は当たりやすい天国ゾーンにいる180ゲームが大チャンスなんだ。



「そっちが終わった途端に本前兆チャンス到来……しかもレアな鷹狩り演出じゃん」

 いきなり響いた声に導かれて吉宗に目をやると明るい顔に変わったヒカルが笑う。


「リリ……鷹狩り演出は滅多にでない激アツ演出だ。当たれば次回ほぼ天国だから」


 ピ~ヒョロと連続で鷹の鳴き声が入りいきなりシャッターが閉まると流鏑馬演出。

馬に乗ったアニメの吉宗が的に矢を射ると赤い大当たりの部分にそのまま直撃する。


『チャンチャカチャカチャカチャカチャンチャチャチャッ!』音と同時に確定画面。


 かなりマジな顔つきでヒカルが吉宗ビッグを選択すると同時にボーナスが始まる。

明るい演歌調の軽いBGMが流れる小役ゲーム中はチャンス予告の演出待ちになる。



 普通は吉宗が民衆に向けて俵を投げるが『チャキッ!』予告音で千両箱に変わる。

一瞬だけ目を閉じたヒカルがすべてのリールに青い7絵柄を狙うと二列に同時揃い。


「ヒカルまでやっちゃってる……リリに追いついたよ。1ゲーム連チャンが二回だ」

 これも数百分の一ぐらいの激レア当選率だからあっさり引けるのは凄すぎるよな。


 映像的に見栄えする二千ゲーム間の大量獲得機による勝負はラストまでもつれた。

抜きつ抜かれつの展開で双方ともビッグ十回。バケが四回で結局は引き分けになる。


 機械割の違いと目押しの正確さから若干有利だったヒカルちゃんに軍配が上がる。

それでも獲得枚数なら数十枚ぐらいしか違いはないからお互い苦笑いするしかない。



「二人とも遅くまでお疲れさん。六時間かけた四千ゲームなりに見応えあったよな。

ハナビストさんが満足できたラスト引き分け……二人ともお願いなら聴いてやるよ」


 正直なところ明らかな差がでなかった時点でオレの一人負けみたいなもんだよな。



「負けたからご褒美いらないよ。ヒカルちゃんならジロウくんのお相手に丁度いい。

とりあえずお願いはリリ優先の行動で……消えちゃったらどうにでも好きにしてよ」


 出会ったばかりで共通点がない二人はそれなりの年齢差はあっても仲良くなれた。

カメラを止めた瞬間に連れション……じゃない。しばらくの間いなくなったようだ、


 二人きりの会話でなにがあったのかはわからない。あまり想像したくもないから。

男に見せない……理解できない領域で共鳴する女たちにどこか気持ち悪さを感じる。

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