第22話
カオスの本公演が喝采のうちに二週間の開催期間を終え、クリスマス公演が賛否両論のなか幕を閉じて、除夜の鐘と共に年が明けた。
稽古場には新年会という名目で仲間たちが集まっていた。コンビニで働く涼花が従業員ノルマで買った冷凍おせちにケータリングをプラスして、あとは各々の持ち寄り。酒類は、酒屋の主である和泉のおごりだ。
「何か、見たことのない料理が入ってるんだけど」
重箱を覗き込み、洸が不安げに言った。さとみが持ってきたものだ。定番のおせちではなくオードブルを作ったのだが。
「食べるのに勇気がいりそうだな」
隼人が茶々を入れる。
「あ、これは分かる。
「ううん。真似して自分で作った」
重箱に伸ばしかけた
「あれ、食べないの?」
さとみの言葉に
「念のためだけど、味見した?」
奈緒が確認するように声を掛けた。
「してない」
さとみの返事に、そこかしこで溜息が漏れ、幾人かが
「ちょっと、これ見て!」
急に上がった声に、皆の視線が動く。倫子がスマホを
「杣木耿彦と冬月結子、婚約だって」
その場にいる全員がスマホを取り出し、一斉にニュースを開く。国際映画祭で賞を獲った作品が日本で公開されるにあたっての、記者会見の席での電撃発表だった。会見の様子がライブ配信されている。杣木監督の誠実な態度と結子のキュートな笑顔に、マスコミの質問は映画そっちのけで二人の馴れ初めに終始した。
「杣木監督って独身だったんだ」
誰かが呟いた。
さとみの横で箸が動いた。辛子蓮根を一口で頬張った洸の眼から、涙がぽろぽろと落ちた。隼人が洸の腕を掴み、引き
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