001 1人称の薄さ

 私の最近の悩みなので、これを考えてみようと思います。


 まず、説明からですね。

 1人称の薄さ、というのは、書き方のことです。


 私は、いわゆるネット小説の書き方は基本的には2種類だと思っていて、一つは、主人公視点で物語る1人称視点、もう一つは物語を一つの盤上として考え、何者でもない第三者が物語る3人称視点だと思っています。



 簡単に言うと、

 口語が1人称で、文語が3人称のイメージです。


 私たちの日常会話って、情報の密度ってそんなに無いですよね。

 アレが美味しかったとか、この小説が面白かったとか。

 当然ですが、グルメサイトやまとめサイトには負けます。


 この、まとめサイトの密度で書けるのが3人称視点の書き方だと思って下さい。



 では、それを踏まえた上で実際にサンプルを見比べてみましょう。


 っ!こ……ここは、どこだ?

 一面が白い空間で、いや、確か俺は……

 ぐっ、思い出せない。こういう時は…そうだ、名前!

 俺の名前は……?


 というのが1人称視点で。


 そこは一面が真っ白な空間だった。

 突如、一人の人間が現れる。

 その人物は草臥れた作業服を身に着けており、呆然としているように見えた。

 そして、頭痛を堪えるように、頭に手を当てると、ウンウンと唸り始めた。


 というのが3人称視点です。


 ここで、突然ですが情報量について比較したいと思います。

 ちなみに、メタい話は無しで。


 1人称視点では、

 おそらく主人公と思われる『俺』は何故自分が一面白い空間にいるのか分からず、記憶喪失のように見える。

 ということが分かります。


 箇条書きにすると、

 登場人物:俺

 状況:分かっていない様子

 状態:記憶喪失

 場所:一面白い空間

 となります。


 一方で、3人称視点では、

 草臥れた作業服を着た人物が一面真っ白な空間にいて、その状況はどうやら、その人物にとって予想外であり、何が起きたのかを把握しようとしている。

 ということが分かります。


 これを箇条書きにすると、

 登場人物:一人の人間

 状況:予想外

 状態:混乱

 場所:一面白い空間

 に+して、

 服装:草臥れた作業服

 備考:突然現れた

 という情報が分かります。


 つまり、同じ4行でも、情報量が3人称視点の方が多いわけですね。

 

 これがつまりタイトルの、一人称の薄さ、という話です。



 ここからは、私の悩みも交えて考えたいと思います。


 この薄さが私の書き方と噛み合ってないのでは?

 と最近思い始めました。


 私は、結構しっかりと文字を書きたいタイプです。

 行間をたっぷり取って、間や雰囲気を大事にしたい、というよりかは、みっしり文章を詰めて、今主人公はこういう状況にあって、こういうことをしたい、というのを全部書きたいタイプです。


 しかし、これを1人称でしっかり書くと、文章は長くなりがちで、その割には中身が無い文章になってしまいます。

 何しろ、主人公の目に映ったものしか書けません。

 主人公の目に映らないものは書けないのです。


 今のところ、地の文を追加することで、なんとか持たせていますが、それすら早くも限界が見えてきました。


 これは、ひとまず行間を空ける書き方に挑戦すべきかもしれません。

 やってみないことには自分に合っているかなんてわかりませんから。


 その上で、改めて、いかがなものかを考えてみようと思います。

 ひとまず結論、出ました。良かったです。


 

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