第34話


 ……ふぅ……。


 なんとか、躱しきったのだろうか。

 日本最高峰、イ〇タニの誰でも焼けるガスたこ焼き機のお陰で、

 たこ焼きパーティで凌ぐことができた。


 茗荷谷からこっちに移す時に流しそうめん機とかき氷機スペースのムダは棄てたけど、

 これは残しておいて良かったなぁ。


 そのあと、はるなさんが、スポンサーから貰ったという

 大手メーカーの最新鋭のコンシューマー機を立ち上げて、一緒に遊んだ。

 画像の鮮明さに唖然とした。僕の知っているゲーム機とはまったく違うものだ。


 それが終わった直後くらいに。

 

 「すぅ……

  ……すぅ……」

 

 僕の手を握りながら、幸せそうに眠っている。

 

 撮影時の平均睡眠時間は3時間半程度らしい。

 待機時間でも、次の作品の台本を読んで頭に入れたり、

 取材に応じたり、ファン対応をしたり、メイキング画像や番宣動画を獲ったり、

 同業者への対応に当たったりで、全然暇がないらしい。


 寝ている顔は、本当に天使だ。

 起きている姿は……魅力が溢れすぎて、ダダ漏れに漏れまくってくる。

 ほぼ2秒ごとに邪な感情が沸きあがってしまうくらいに。

 神経を集中する先マリ〇カートがあったのは僥倖だったというべきか。


 空調が入っているので、風邪は引かないと思うけれども、

 とりあえず、ベットに

 

 ……っ!?

 

 「ん……ぅ……んっ」

 

 な、

 な、なにが、おこった……っ……?

 

 手を握っている反対のうでを引かれて、

 するっとからだを寄せられて


 

 「……えへ、へ……」

 


 抱かれて、るっ!?


 

 い、いや。

 これは、絶対的に、まずいなんてもんじゃない。

 こんなことならたこ焼きパーティが終わった時に

 トイレでしっかりをいた

 

 ぴりりりりりっ

 

 !?

 

 「!」

 

 お、起きちゃったっ。

 か、顔が真っ赤ですけど

 

 「で、電話出ますからっ。」


 ぴりりりりりっ

 

 「は、は、はいっ!!」

 

 ぴっ

 

 「も、もしもし。」

 

 『あ、小辻さま、ただいまお電話よろしかったでしょうか。

  わたくし、「寄らば大きな樹の陰」でお馴染みの、

  サンスタンド生命保険のミナミと申しますが』

 

 「……間に合ってます。」

 

 ぴっ

 

 ……やっぱり、0120じゃないか。

 なんだよもう、取らなくていいやつじゃないかぁ……。

 

 い、いや。

 いまの状況を救ったのは、間違いなく0120だ。

 ありがとう0120。絶対入らないけど。

 

 「……。」

 

 い、いや。

 めちゃくちゃ気まづ……

 

 ん?

 

 RINE、入ってたんだ。

 音出すようにしてたのにな。

 レーシングゲームに無理やり集中してたから、気づかなかったわけか。

 

 えーと。

 

 これは……

 あぁ、「ちさと」さんか。


<急展開

 メール送ったからすぐ見て>


 すぐ??


 ノートPCを立ち上げて……ちょっと重くなったなぁ。

 さすがにこれは買い換えないとだから、秋葉原に行くか。

 最近はもうメリットあま

 

 えっと……

 

 あ。

 あぁ、これか。

 

 えぇっと……?

 リンク先……公開情報……


 

『エクスプロージョン元役員、

 売春防止法違反で逮捕、送検へ』


 

 ……

 え。


(警視庁が極秘裏に捜査に着手したって話もあるんだから)


 あ、あぁ。

 これ、ほんとに動いたんだ。

 

 ……ん??

 

<『元』役員?>


 ……


 すぐ、来ないか。

 

 ふぅ……。

 ま、待つか。


 ん?


「どうしました?」


 はるなさん、

 なにか、真剣な目でスマホを見てたけど。


 少し髪の乱れたはるなさんは、首を左右に振りかけた後、

 真剣な表情に戻って、僕に、アイボリーのスマホを見せた。


「……。」


<リアレペ>


 なんだ、これ?


「……

 また、襲われたみたいなんです、留美ちゃん。」


 はぁ?!

 っていうか、??


「……今月に入ってだけで、三回目くらいだと思います。

 撃退したり、説得したりしてるので、大したことない、って言ってます。

 でも…。」


 いろいろ異常な話しかないな。

 ただ、さもありなんなトコもある。


(仕事を無くしたり、訴えられたり、

 同業者に恨まれたり、勝手に祭り上げられてこき下ろされたり)


 恨まれる先が多すぎるもんな。

 こんな仕事辞めればいいのに。

 

 いや。

 

 ここまで来ると、仕事、辞めればいいってもんでもないかもな。

 人生を狂わされたと感じる奴とかは、一生、逆恨みし続けるかもしれない。

 ちょうど、前職で僕を逆恨みし、あの街にいられなくした連中のように。


 ぶーっ

 

 「ごめんね、ちょっと。」

 

 「はい。」

 

 あ、「ちさと」さん、だ。

 意外に早かったな。

 

<一週間前に解雇してたらしいの

 蜥蜴の尻尾切りもいいトコね>


<なるほど>


<で、こっちも動くわ

 来週、広報部から、百五十周年事業のCM案の企画書が三案出るの>


 ほんと社内事情詳しいよな、寺岡さん。

 情報源は多いって言ってたけど。


<まぁ、広報部の面子を立てるためのものと思うけど

 わかるでしょ?>


<……なんとなくは>


<ふふ

 これって、君次第ってことよね>

 

<は?>


<だって、そうでしょ?

 君の豪華なお部屋を確保してるの、湯瀬さんだし>


 それは、まぁ。


<知ってるでしょ?

 湯瀬さんの経歴>

 

<前も言ってましたね、それ>


<あら、本当に知らないの?

 まぁいいわ。湯瀬さん、元はの人よ

 なんてったってアイドルだから>


 え゛

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