第3-4節:戦いの結末
どういうことなの……これ……?
相変わらず何が起きているのか見当もつかない。
そして風の刃が全て消え去ったあと、コメット様は突進してフロイ様との間合いを一気に詰める。間髪を容れず、右手で彼の首を掴んで軽々と持ち上げ、壁へ押しつける。
気道を狭められ、もがき苦しむフロイ様。最初はコメット様の右手をなんとか振り解こうと抵抗していたけど、程なく力が抜けて手も足もだらりとぶら下がっているだけの状態となる。
瞳は光を失い、もはや虫の息なのは明らかだ。
「良いぞ、その絶望と恐怖に染まった瞳。心を打ち砕かれた音が聞こえてくるようだ。このまま首を捻り潰してやる」
「……ぁ……っ……」
いけない、このままではフロイ様が死んでしまうっ!
巫女としての能力によって、生死の一線を超えてしまうまで一刻の猶予もないのが私には分かる!
コメット様を止めないとっ!!
いくら酷いことをされたからといって、命を奪うなんてやり過ぎだ!
「もうその辺でやめてあげてくださいっ、コメット様! 命まで奪う必要はないじゃないですかっ!」
「うるさい。こいつは殺しておかねばのちのち危険だ」
「フロイ様には記憶を操作する魔法を掛けておけば、しばらくは安心ですっ! その間にどこかへ逃げればいいではないですか!」
「それでは俺の怒りは収まらん」
「ダメ……ダメです……やめてぇええええええええええええええぇーっ!」
感情を抑えきれず、私は夢中で叫んでいた。
その瞬間、私の全身から空気の波動のようなものが発せられ、空間全体へと発散する。
直後、コメット様は動きを止めてフロイ様の首を掴んでいた手を放してくれる。
その場に落下し、大きな音とともに倒れ込むフロイ様。ぐったりとして失神をしているみたいだけど、まだ命の息吹は消えていない。
良かった、間に合った!
私は即座に駆け寄り、意識を取り戻さないギリギリのところを見極めてフロイ様に回復魔法をかけた。もう命の危機はない。
その後、忘却の魔法で彼の今夜の記憶を消し去っておく。もちろん、私よりも強い魔法力を持った人が復元の魔法を使えば、全てを思い出してしまうだろうけど。
――と、その段階になってふとコメット様へ意識を向けると、彼はさっきからずっと同じ姿勢のまま動かないでいることに気付く。
まるで金縛りにでもあったかのようだけど……。
「コメット様、どうしたのですか?」
「か、体が動かんのだ……っ!」
「えっ?」
「――そりゃそうだ。今、コメットの力の根源はリーシャにあるんだからね。彼女の意に反する行動は出来ない」
その時、私の背後から誰かの無感情な声がした。
目を丸くしながらその方向を見てみると、フロイ様の風の魔法によって破壊された窓のところに、白い小さな塊が
「スノーっ!」
そこにはいつの間に戻ってきたのか、真顔でいるスノーの姿があった。背後から月明かりに照らされ、いつも以上に神秘的な印象を受ける。
(つづく……)
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