第6話 冒険者になりました
「ここでお待ちください! すぐにギルドマスターをお連れします」
受付のお姉さんにエリクトからもらったメダルを見せてから,高級そうなソファやカーペット,シャンデリアがある豪華な応接室に連れてこられた彰とマリア。
「このメダルって実はすごいモノ?」
「受付の方々の反応を見るに相当珍しい物なんでしょう。そのメダルを見せただけで豪華な応接室に案内され,紅茶にお菓子まで,この世界じゃお菓子は高級品なんですよ?」
へー。どこかの貴族様みたいなおもてなしをされてる感じなのか。メダルの価値の高さにも驚いたけど,エリクトの商会ってそんなにすごい組織なのか。
彰はメダルに刻まれている麦と財宝袋のエンブレムを眺めていると,扉が開き筋骨隆々な彰よりも一回りほど大きい体格の髭を蓄えた老人が入ってきた。
その老人は彰とマリアの座るソファの対面の椅子に座ると二人を値踏みするような目でジッと睨みつけてきた。
「あ、あのぅ……」
無言のまま睨みつける老人に雰囲気に耐えられず、彰が話しかける。
「……」
えっ! 無視!? なんだこのごつい爺さんは!
「なぁ」
「はいっ!」
「あんたらはリッチブレッド商会のメダルを持ってきたらしいがどこで手に入れた? 盗んだとは考えられねぇ、あのエリ坊がそのメダルを盗ませるはずがない。殺して奪ったわけでもねぇな。野郎はともかく嬢ちゃんはとんでもなく強いが二人とも人を殺した匂いがしねぇ」
人殺しとか匂いでわかるもんなの!? それに俺はともかくって
「もう一度聞くぞ。メダルをどうやって手に入れた」
こっわ!
素人の彰でも分かるほどの覇気を出す老人。マリアは平然としているが彰は冷や汗をかく。
あんまり大勢にガチャアイテムを教えたくはないんだけど、変に嘘ついてもバレるだけだ。
「エリクトさんにを売ったんです。そのお礼としてこのメダルをもらいました」
「ほう。アイテムを、それはどんなアイテムだ。リッチブレット商会は売れないものはないって豪語してる商会だぞ? よっぽど珍しいアイテムなんだろ?」
「そのアイテムは食料召喚陣です」
「食料召喚陣?」
「実際に使うところを見ますか?」
「おう、やってみろ」
それからはトントン拍子でことが進み、食料召喚陣を使うところを実際に見てどうやら老人は彰の言葉が真実だと信じたらしい。覇気を纏った歴戦の老戦士のような雰囲気から気の良い爺さんの雰囲気に変わって彰たちに接してきた。
「ガッハッハッハ! すまんな! 俺はエリ坊がこ〜んな小さい頃から気にかけてやったんでな。あいつが商会を継いでからメダルをやったのは初めてなもんでな少し警戒させてもらった!」
「は、はぁ」
なんだこの爺さん! 次は笑ってめちゃくちゃ肩叩いてくるんだけど
「あぁ! 自己紹介がまだだったな。俺の名はオルテガ。冒険者を引退してからはここでギルドマスターをしてる。よろしくな。俺のことは好きに呼んでくれ」
手を伸ばして握手を求めるオルテガ。彰、マリアの順で握手を交わす。
すげぇ、岩石かよってぐらい手の皮が厚くて硬い。
「彰です。よろしくお願いします。オルテガさん」
「マリアです。彰様の従者をしております。……オルテガ様?」
オルテガがアリアと握手してからマリアの手を離さない。
「おっおう。すまんな。マリア嬢ちゃん。やっぱり強いだろ。おそらく俺よりも」
そうなの!? 俺じゃ全然わからん。マリアとオルテガさんが並んでると美女と野獣みたいだけどマリアの方が強いのか?
「彰の坊主はあの魔法陣みたいな珍しいアイテムを持ってるが、純粋の強さで言えば素人同然だ。だがマリアの嬢ちゃんは計り知れねぇな」
「ありがとうございます。オルテガ様のような強者に賞賛され嬉しく思います」
「いずれ手合わせを申し込むかもな」
「その時は全力でお相手します」
え〜……? オルテガさんにしれっと弱いと断言されたし、マリアはなんかやる気になってる……
「オルテガさん! マリア! 手合わせは後にして冒険者登録をしたいんだけど!」
「そうだったな! それじゃあ俺自ら冒険者について説明しよう!」
それから冒険者の規則や依頼についての説明を受けた。
冒険者には個人の強さや所属するパーティの総合力から下から【ブロンズ】、【アイアン】、【ゴールド】、【プラチナ】、【ミスリル】、【オリハルコン】、【アダマンタイト】の7つの等級からなりオリハルコンになれば国からの支援が受けられるほどになり、アダマンタイトにもなれば一国と同等の戦力と権力を認められるらしい。
だが実際存在する冒険者の最上位はオリハルコンで冒険者ギルドのある国それぞれ一人、もしくは一バーティいるらしい。
それから冒険者の規則についても聞いたが、あってない様なものらしい。殺しさえなければどれだけ冒険者同士でやり合ってもよく、辞めるのも自由。来るもの拒まず、去る者追わずが冒険者ギルドの心情だとオルテガは語った。
「よし、これでお二人さんの冒険者登録は完了だ。本当に良かったのか? 二人はパーティを組むんだろ? マリアの嬢ちゃんの実力ならプラチナぐらいから始めても良かったじゃないのか? 俺の権限ならそれぐらいできるぞ?」
「別に私たちは冒険者として生活したり、お金を稼ぐのが目的ではありませんから、それにいきなりプラチナから始めてしまってはいくら双頭ライオンを倒した彰様でも戦えないモンスターばかりじゃないですか」
「まっ、俺は強制する気もないし、出来ないから別に良いけどよ。それに彰の坊主は双頭ライオンを倒したことがあんのか?」
「え。まぁそうですね。一対一でなんとか……」
マリアの能力貸与のおかげだけど。
「ほう……俺の勘も鈍ったか? 双頭ライオンはアイアンの上位クラスのモンスターなんだが、素人にしか見えないお前が倒したのか」
勘が鈍ったわけじゃなくて俺がチートしてるだけなんだよなぁ。
「まっ、それは置いといてこれでお前らは冒険者だ。最初は装備を揃えに鍛冶屋を紹介するもんなんだが、その必要はないみたいだな」
それはそうだろう。彰の装備は全部ガチャ産のアイテムだ。おそらくこの世界の装備の品質よりは数段いいものだろう。それに彰が装備している革の鎧と鉄の剣よりも明らかに強力な装備がインベントリの中に眠っているのだ。実際彰は鍛冶屋に行く選択肢がなかったぐらいだ。しかし。
「いえオルテガ様。鍛冶屋を紹介してくださいませんか? できればオルテガ様が最高だと思う職人の店舗が好ましく思います」
「マリア?」
「ん……? あぁそうか。確かに最高の職人だとダメだわな。ここに行ってみろゴルドー工房っていう頑固親父が一人でやってる鍛冶屋だ。オルテガの紹介ってなら仕事を請け負ってくれるだろ」
何に納得したの!?
「ありがとうございます。早速行ってみますね。失礼します」
「おう、またな」
オルテガが机に掘られた街の地図に指をさし目的地を伝え、マリアは少し嬉しそうな表情をすると俺の手を引き足早に応接室を後にした。
冒険者ギルドの外に出た後になぜ鍛冶屋に行くのかをマリアに聞いてみた。
「マリア。なんで鍛冶屋に行くんだ? 装備ならガチャ産のアイテムがあるじゃん」
「確かにゲームのままなら鍛冶屋に行く必要は今のところはないですね。ですがここは現実です。装備したアイテムは手入れしないとダメになってしまうんですよ。ガチャアイテムももちろん私の装備も、ガチャアイテムには装備の手入れできる油などのアイテムがないようなので鍛冶屋で手入れしてもらうか、自分で道具を買って自分でやらないといけないのでオルテガ様に鍛冶屋を紹介してもらったんですよ」
なんだろう。いつもよりマリアが饒舌だ。
「それにオルテガ様の紹介なら腕は確かでしょう。武具を扱う職業なら腕のいい鍛治職人とは懇意にしとかないと」
冒険者ギルドから十数分で目的地についた。店の外観に二人は疑問と不安を覚えた。
ギルドマスターから紹介された店なのに店の外観はかなり悪い。というか看板がなかったら廃墟と勘違いしてしまいそうになる程ボロボロだ。
「ここが?」
「そのようですね。ゴルドー工房。オルテガ様がおっしゃっていた鍛冶屋の店名と同じです。行ってみましょうか」
え!?
錆びついたた金具から少し不快な音が鳴る扉を開ける。灯りが一つもない暗い店内には、飲んだくれた背の低い無精髭を生やした男が飲んでくれていた。
「あなたがゴルドー様ですか? 私……」
「出てけっ!! 仕事はもうやってねぇんだ!」
オルテガから紹介された職人から仕事を請け負ってくれるどころか、強く拒絶された。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます