第2話 異世界と出会い
「なんだよあれ。スマホが急にチケットに変わった?」
強い光を浴びて視界がぼやけて見える。
「あれ? チケットがない」
手に持っていたはずのチケットがない。どこかに落としたのだろうか。回復してきた視界で落としたチケットを探そうとすると、彰が今いる場所の異常にやっと気づいた。
「なんだよここ……」
彰の居る場所は先程までいたアパートの一室ではなく。広大な平原のど真ん中にいた。しかも彰の目の前に広がる景色には明らかに彰の現実に存在するものではなかった。
「あそこの湖にいるのは牛? 尻尾が蛇になってるし、体も角も異常にデッカい。うわッ! ドラゴン!? あ、牛連れてった」
現実離れすぎて逆に冷静になる。そして一つの結論が出た。
「異世界……なのか?」
状況的にそれしか考えられない。というか異世界転移券ってそういうこと!? はいか、いいえで決めちゃダメだろ! 説明がなさすぎる!
「はぁ、どうすればいいんだ? 誰か教えてくれよ」
ひらけた平原を見渡す限り人里のようなものは存在しない。それに地平線に人影すらない。
彰は数分ほど悩み、動かないことには何もわからないのでとりあえず周りを散策することにした。
しばらく平原を歩いてみたがやはり人影は見当たらない。部屋着、裸足で野外に放り出されて、そろそろ足の裏が痛くなってきた。
「人いなさすぎだろ……」
どこまでっても平原と森、見たことのない生物だらけ。先ほど見た牛のような動物以外にも根が触手のようにうねって動く木。首が2本あるキリン。足が8本あるシマウマ。地球と似た動物を見つけてもどこか異世界を思わせる特徴を持っている。改めて彰の今いる場所は異世界なのだと感じさせる。
「あれは……人!?」
遠くの方に見えた人影。諦めかけていた彰には藁にも縋る気持ちでその人影を追いかけた。
「おーい! 待ってくれ! 質問したことがあ……る……。え?」
彰が追いかけた人影。見つけた時には彰と同じぐらいの体格をした平均的な身長の人に見えたのだが、疲労で判断力が鈍っていた自分を殴りたい。彰の目の前にいる相手と目が合った時には後悔しかなかった。
UGAAAAA!!
「うあぁぁああああ!」
人の形をした化け物だった。3m以上はありそうな身長。血管が浮き出ているほど発達した全身の筋肉。青い肌に三つの目。腰に何かの獣の皮を巻いているだけの格好。
そして何より晶を見つけるなり持っている棍棒を叩きつけながら追いかけてきた。
「ハァ……ハァ……なんなんだ。巨人? ……サイクロプス?」
追いかけられてすぐに森の中へ逃げた彰は木の影に隠れていた。
平原を散策していたときはある程度は地球と同じよな見た目をした動物が多くいた。やっとの思いで見つけた人影が見つけるなり追いかけてくる巨人とか悪い夢だと思いたい。
「こんな危険が待ってるなら尚更説明が欲しいよ。異世界……」
一息ついていると、背もたれにしてた木が薙ぎ倒される。
「嘘だろ。クソッ」
まさか木を薙ぎ倒して見つけられるとは思わなかった。森の木々を抜けなが逃げる彰。少し後ろを振り向くと化け物はその巨体で木々を薙ぎ倒しながら一直線に彰のことを追いかけてくる。
「そんなのあり!?」
愚痴をこぼしながら必死に逃げる。森を抜けようと光が強い方へ逃げていく。やっとの思いで森を抜けようとすると、彰の視界がグルンと逆転した。
「ぐっ……!」
どうやら木の根に足を取られたらしい。化け物が近づいてくる。すぐに立ち上がろうとすると起き上がらない。
「な、なんで」
足元を見てみると、木の根が彰の足を絡め取って固定している。
「さっきの木か!?」
散策来る時に見た根っこが触手のようになっている木。木の根がそのようになってるものはどれも移動していたので森の木は普通の木だと思って油断した。
「解けねぇ」
触手のようにぬるぬると動くのに木のように硬い。素手で解ける硬さではない。まるで最初からそこに絡まっていたかの様になっている。
UGAAAAA!!
木の根を解くのに必死で気づかなかったが、化け物がもう目の前にいた。
し、死ぬ……。
そう思った。巨人の化け物は持っている巨大な棍棒を振りかぶり輝に向かって振り下ろす。
その瞬間彰の頭の中に声が響いた。
『チュートリアルを開始します』
頭の中に響いた無機質な声。それと同時に彰の目の前に一本の光柱がたった。
「な、なんだ!?」
光の柱の中に人影があった。
「お、女の子?」
「オルドリッチ王国剣術秘伝『赤薔薇の一太刀』!! 」
光の中から女の子の力強い声と共に巨人の化け物が真っ二つに裂ける。裂けた体は霧散し、薔薇の花びらのような赤い花弁となり舞い散る。
少しずつ光が止み、光の中の人影の正体が明らかになる。
黄金の糸のように輝く髪。燃えるような赤い色をしたドレスに純白の鎧を合わせたような特徴的な衣裳。細身の剣を納める鞘には赤い薔薇の装飾をしていて、幼いながらも大人びた顔は危うい美しさがある。
巨人の化け物を裂いた細身の剣を鞘に収め、パタパタと犬を思わせる雰囲気で近寄ってきた。そして彼女が手を伸ばし彰に声をかける。
「危なかったですね。大丈夫ですか?」
「あ、ありがとう。君は? 」
「私ですか? コホン、私はマリア・フォン・オルドリッチ。マスターのサポートするため『サイバー&ファンタジア』から参りました。これから末長くよろしくお願いしますね」
彼女は笑いながら、僕の手を取った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます