晩夕
ルーアの傷口は、殆ど塞がった。
奇跡か、必然か、ルーアはあそこから回復したのだ。
しかし、失った物は戻りはしない。
左腕、右足、愛する人。
それらから逃れるように、ルーアはほとんどの時間を寝て過ごした。
部屋の隅に、人骨があるのに気付いたのは、小屋に来て二日目だった。
簡易的にはなるが、レナが一つ一つ丁寧に埋葬した。
ルーアも、一度だけ手を合わせた。
そのとき、彼女は珍しく、一筋の涙を流していた。
レナはルーアの症状が安定し始めると、外に出て、情報を集めたり、食べ物を取ったりしていた。
兵士はこの近辺に溢れていたが、何故かこの山には近寄ろうとしない。
どうやら怖い伝説がこの山にはいくつもあるようだ。
老人を捨てた山、子供を捨てた山、恋人が揃って身投げした山、様々な伝説が溢れるせいか、この山には誰も寄り付かない。
風の噂では、人間側も、魔物側も、極度の混乱状態に陥っており、まともに戦争など出来る状態でもないらしい。
恐らく戦争はひっそりと収まるだろう。そしてまた次の戦争の準備に入るのだ。
そこに私はいない。そうレナは思った。
「……ルーア、起きてる?」
レナが肉を片手に小屋へ戻ると、ルーアが上半身を起こして窓の外を見ていた。
「いいでしょ、窓。なかったからこないだ開けてみたの」
レナは手馴れた様子で肉を切り、味を付ける。
「外で焼いてくるね」
外で肉を焼いて戻ってくると、ルーアは寝ていた。
夕陽が差し込んで、ルーアを照らしている。
肉を机に置いて、ルーアの隣に椅子を引いて座る。
暖かなな夕暮れだった。
窓の外、空では鳥が帰ろうと羽ばたいており、木のそばでは二匹の蝶が飛び回っていた。
ゆっくりと時間が流れていくのを感じていた。
ルーアの右手を取る。そこには、あの指輪があった。
レナの手にある指輪と合わせると、コツンと小さな音が鳴った。
レナはルーアの右手を取ったまま、傾いていく夕陽を、何時までも眺めていた。
あとがき
本当に、ここまで読んでいただいてありがとうございます。
終わった感想ですが、もっと掘り下げても良かったような。ただ、簡潔に、それでいてしっかりと書けたような気がします。
満足いく仕上がりでした。
重ね重ねになりますが、本当に、ここまでありがとうございました。
良ければ星評価、ブックマーク、いいね、感想など送ってくださると嬉しいです。
追伸
続きの構想は、あります。
書くかどうかは皆様の反応や、他の作品との兼ね合いなど考えてにはなります。
新作も余り日を置かず書き始める予定なので、そちらも是非とも!
世界を滅ぼす、勇者の話 @sakura_ryo24
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