第15話 オシャレは回ってやって来る
だからこそ私は諦める訳にはいかない。
そもそもそんな選択肢私には存在しないのだから。
彼女の未来を奪った私に諦める事は許されない。それが彼女の嫌がらせが理由だとしても。手にした仕事は全て完璧にこなす。
それが仕事を、いや、他人の人生を変えた人間の責任だと思うから。
そんな事言ったてそれも自分の行いを正当化するだけのただの戯言にしかすぎない。そんな事したって誰も喜びなどしないだろう。
だから、今からする事はただの自己満足。
「簡単ですよ、この服このまま着ればいいんです」
「はぁ~!?」
また私に対して驚きの悲鳴があがる。これももう慣れた。
「いやいや、着るったって着れないから困ってるんでしょう?」
「確かに普通の服として着るのは無理かもですけど、着ようと思えば何とかなりますよ。私は一流のモデルですから、どんなに斬新な着方で斬新な格好をしても私が着ればそれがオシャレになるんですよ!」
自信満々に私は言い放つ。自分でこんな事を言うなんて結構恥ずかしい。
どんだけ自分の事が大好きでナルシストだと思われただろう。それは間違っていない。
正直今の自分の事はめちゃくちゃ好きだ。
それも自分が軽く引くくらい。そもそもこんな事を本気で今までずっとやって来たのが何よりの証拠だ。自分の事が好きで何が悪い。自分の事を信じて何がいけない。モデルなんだから自分の事に絶対的な自信がある位の方が丁度いいに決まってる。
そう信じてる。
「でも、仮によ、それが上手くいったとして、その服のスポンサーや雑誌側が黙っていないに決まってるわ」
「そこら辺は進藤さんに頼るしかありません。お願いします。それでもやらせて下さい。私のプライドに賭けて誰が見ても納得のいく物を完成させると約束しますから!」
「……本当にやるのね。高確率で失敗すると分かっていたとしても。失敗すれば折角手にしたモデルの仕事も全て失う事になるでしょうね。それどころか、二度と芸能界の敷居を跨ぐ事すら出来なくなるかもしれないわよ。それを分かって覚悟した上で言ってるのよね?それとも貴女の目には成功するイメージしか見えてないのかしら?」
「勿論です。だって私失敗しませんから」
…………多分……………
「いいわよ。分かった。もう、好きなようにやっちゃいなさい!後始末は全部私がやってあげる。だから安心して本気で死ぬ気でやり遂げなさい。その代わり貴方が新しい歴史を作るのよ。いいわね!」
私は自信満々に頷く。
現場のスタッフが不安そうに話しかけてくる。
「姫乃さん。やるって言ってもどうするんですか?」
「取り敢えずこのまま着れそうなヤツとそうじゃないヤツを一緒に分けちゃいましょう」
ボロボロになった服を必死に仕分ける。
着る予定だったジャケットはこのままでも何とかなりそうだ。ただスカートは無理だな……見事に真っ二つだ。このまま繋ぎ合わせるって考えもあるけど今回は別だ。バラバラになった衣服は他にも色々ある。
なら、バラバラになった服とスカートをつぎはぎに繋ぎ合わせてみよう。
普通はあり得ない組み合わせでも繋ぎかたや工夫次第で何とかできるはずだ。
着る予定だったシャツだって柄違いでどんどん繋ぎ合わせていく。そうすれば世界に一つだけの自分だけの服が誕生する。最近ネットで偶然見かけた不用品のリメイク術特集が役にたった。
まさか、こんな所で役に立つとは思わなかったけど。
いつ何時どんな知識が役に立つかどうかは分からないって事だ。まあ、それ以上に驚いているのはその記事を一度見ただけなのに完璧に覚えていて自分なりのアレンジも加えながら作業が出来ているって事。
裁縫なんて殆どやった事が無い。なのにどんどん出来ていく。頭の中のイメージが少しずつ現実世界にそのまま流れていく様に出来上がっていく。裁縫の道具だって簡単な物を現場のメイクさんがたまたま持っていたから良かったけど。なかったらどうするつもりだったのだろうか。自分でも訳が分からない。というかこの状態になると頭の中のイメージ全てを出来る気に不思議となってしまう。
そんなこんなで上手いこと繋ぎ合わせたツギハギな柄の衣装が完成した。よく分からないが不思議と完成したのだから仕方がない。
さぁ、衣装は出来た。
それも想像以上の仕上がりになった。
周りのスタッフもこの仕上がりに今までの不安な表情は自然と無くなっていたみたいで寧ろワクワクした表情を見せている。
さあ、いよいよお披露目よ!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます