第7話

ふぅ…つい、3食分を平らげてしまった。イイダには申し訳ない事をしたが、本能だから仕方がない。寧ろなぜこんなに美味しいものを食べて、ビーちゃんは1人前を、丁寧に、しっかり噛み締めながら、食べる事ができるのかが謎だ。おかわりくらいしても良いのに。


「その、ごめんなさい!3食分も食べてしまって…すぐ山菜とか取って、同じだけの量は回収してきますので…」

「ははは…良いんだよ。3食分も食ったお腹で採取に行ったらお腹痛くなっちゃうでしょ。だから大丈夫。強いて言えば、井戸から水汲み上げてきてほしい、くらいかなぁ。」

「い、イドがどんなものかはわかりませんが、水はちゃんと取ってきます!!!コウジンニゾンジマス!!」

使い方がわからないが、たぶん幸甚に存じたので、とりあえず幸甚に存じた。というか井戸って何だ…この感じ的にわたしの観ている世界とは決定的な違いがあるだろうし、たぶん変なものなんだろうな。


「あー、あそこの穴空いてるところ!バケツ落として重くなってきたら糸で引っ張ってくれたら、それで大丈夫!落ちないように気をつけてね!」


どんだけデケェ穴なんだよ。そんな穴見たこ………


…クソデケェ穴だ…………


この穴より遥かに深い谷は見た事があったが、これが人工物だと思えば思うほど恐怖が増幅して、足がプルプル震えた。けれどちゃんと取ってきた。


「おつかれ。疲れたでしょ。」

「は、はいぃ……」

肉体的に疲れたというよりかは、精神的に疲れた。情報量が多すぎる、たぶん今日中にこれ以上の情報量がきたら…

「じゃあ、農場でも見に行こうか。」


………ビーちゃん!!!たすけて!!!


思いが通じたのかはわからないが、農場にはちゃんとついてきた。まあ、ビーちゃんも多少は興味があるのだろう。しかし、私は思いっきり顔に出てるというのに、ビーちゃんは未だに、笑顔でも、悲しい顔でもない、虚ろな目でこちらを見ている。達観しているのか、何なのか、マジでわからないが。


「ふぅ…ここが農場!というか田んぼ!今は9月だから、もうちょっとで米が実るよ!新米は美味しいからね〜」

「えっ…コメってその辺に生えてるわけじゃないんですか!?」

「うん。こっちでしっかり面倒見てあげる必要がある。沢から水引いたおかげで随分楽にはなったけど、水が足りなかったら井戸から汲み上げる必要があるし、殻もちゃんと剥かないといけないし、野鳥が食べないように監視する必要もある。だから結構大変だよ。だけど効率は良いし安定する。」


あああ情報量でぶっ倒れるぞー!!!さっき井戸を覚えたばっかりなのにシンマイがどうとかカラがどうとかめちゃくちゃ大変じゃん!!私普段目の事で困ったことなんてないのに、視界がぼんやりしてるもん!!つかれた!!


「そしてあれは…」


あ、あれは…?

「あ、あれはお化け笑」


……?オバケ?化け物みたいな事か?視界がはっきりしてきたから、見え……そ……………


「ギャーーー!!!!!!」バタッ!!

「ごめんごめん、大丈夫だから!大丈夫だから!!!調子に乗って冗談言っちゃった!!あれは案山子!!かかし!!」


その"オバケ"は、人型をしていて、かつ、両腕が骨のように細く、顔が木でできていた……


…人工物かぃ……そう思いながら、私はゆっくりと失神した。意識を失う間際に、彼がこう言った!


「ほんと、タイヘンモウシワケゴザイマセンデシタ!!!」


…これが"昔の文明"を知ってる人、か……

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ラブ&エンド なりた供物 @naritakumotsu

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