30日目『雲壌/天地』

自分はこのレポは元の日記があり、被疑者死亡である以上はそんなに難しいものではないだろうと思っていた。

Aがネットに上げていた日記「きょうしゅ」は『梟首。きょうしゅ。打首にした罪人の首を木にかけてさらすこと。さらし首』か『凶手・兇手。きょうしゅ。乱暴な悪事をする者。またそのしわざ』の2つの意味を持つような気がしている。

女の生首を偶然見つけた被害者が梟首、凶手・兇手はおそらくA本人のことだろう。


「遠い…」とパーキングエリアに着いた時点でぼやくぐらいには現地はまだ遠かった。

この距離を移動したもんだと感心しつつパーキングエリアでしばし休憩した。

このレポの仕事が決まった時の嬉しさと天地の差と言っていいほどの悲しさと疲労感が出てきていた。

現地に着いたが夜遅いのでAが泊まっていたというネットカフェに泊まる。シャワーも借りたがネットカフェ自体は明るく快適だった。ネットカフェのパソコンで色々と調べ、とりあえず明日は飛び込んだ湖と実家付近と山に行くかとスケジュールを組む。段々と眠くなってきたので切り上げて眠ることにした。


朝起きた時に何か変な夢を見た気がしたがすぐに忘れて、まずはAの実家に来たがこちらは立入禁止のテープに阻まれて入れやしなかった。すでに来月中の取り壊しが決まってる。家の外観だけ撮影し、ここは早々に撤退した。

次は湖である。一時期、報道合戦になってた時はここにマスコミが集結していたが少し経った今は誰もいない。そもそも人がいないところだったからこそ、ここを最後の場所に選んだんだろうと思いながらベンチに座る。ベンチも柵も色褪せていて全体的に寂しい印象を受ける場所だった。


そして15時頃、山の駐車場に来たが山の工事は完全に止まり、バリケードすら撤去されて中途半端に切り崩された山になっているとの話だった。

山の登山口から入ったが工事が入って木が伐採されていたので非常に開けた山になっていた。

200mちょっとしかない低山だ。登山道から逸れて20年前に女の生首が見つかった場所を探す。

新聞や他のニュースサイトを参考に発見現場へ歩いていった。

そこには大量の落ち葉があって、写真を取るのには見栄えが良くなく、足で少し蹴散らすことにした。意外と落ち葉の量があったが妥協して、まぁこれでいいだろうと思ったぐらいに足に何か当たった。


そこには落ち葉に半分埋もれた女の生首があって目があった瞬間に「私、29歳で死んだの」と言った。

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きょうしゅ 湾野薄暗 @hakuansan

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