26日目『故郷』

「私、29歳で死んだの」

「俺、29歳で死んだんだよね」

俺は2つの生首と向かい合っている。

これは夢だ。夢に決まってる。

今まで夢で生首と向かい合ってた時は身動きも声すらも出なかったのに声が出そうになる。

おそらく言ったらまずい事になる…俺は唇を噛みしめて口を開かないようにした。


気づくと実家のリビングに転がっていた。

昨日の記憶がぼんやりしてるが異臭がリビングに転がっている俺の鼻まで届いてるのでどこかにクーラーボックスを置いたのは間違いないな…と思いつつ起きた。

どの部屋だ…と思いながら片っ端から開けていくと仏間に置いていた。


幼い頃から、この仏間も嫌いだった。

全部の遺影がこっちを見てるような気がして。

家の重圧や何者かにならないといけないという目に見えない圧力、田舎の閉塞感、「ほら生首見つけた子の片割れだよ」といつまでも言われ続けるのに嫌気が差して故郷を出た。

「結局、俺はユウキを殺して何がしたいんだろうな…」と呟くが何も返ってこない。

当たり前だ。これは現実で夢の中の話すユウキではないのだから。


「これからどうしようか」と座り込んだ俺はクーラーボックスを撫でた。

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