25日目『灯り』

山に着いた。今朝は11月では1番の冷え込みらしい。寒い。手がしびれる。

山は数日前と変わらずバリケードがあり、

バリケードが暗い影を落としていた。

一応だが灯りを持って俺は山に入った。


バリケードを超えた先の山は静かだった。

鳥の鳴き声も聞こえない。

おそらく工事のショベルカーが入ったであろう道を歩いていくと、クーラーボックスが俺が捨てた時の状態のまま転がっていた。


俺は静かにクーラーボックスに近寄り、

ゆっくりとクーラーボックスを開けた。

ゴロリと出てきたのはユウキの生首だった。

その腐っているユウキの生首を見た瞬間に思い出した。

あの日、玄関前に居座るユウキに根負けして家に上げたこと。

女の生首を見られたこと。

警察に通報されそうになって殺したこと。

隠したくて遺体をバラバラにしたこと。

全部、思い出した。

バラバラにした遺体を色んなところに捨てるために実家に帰ってきたんだった。

「謎の引っ掻き傷はユウキが…」

猫に引っ掻かれた以外の引っ掻き傷はユウキを殺す時についた傷だった。


どれくらいの時間ぼんやりしてたのかわからないが俺はクーラーボックスにユウキの生首を戻して、クーラーボックスを抱えて山を降りた。

帰り際、後ろから「私、29歳で死んだの」と聞こえた気がした。

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