3日目 『 だんまり 』
女の生首が家に現れて3日が経った。
わかったことは女の生首は目が合うと
「私、29歳で死んだの」と言うこと。
あと女の生首は断面から血や体液が出ることだった。床が汚れるので生首が転がる辺りに100均で買ったレジャーシートを敷いた。
耐えれなくなった俺は昨日買ってきたガムテープを女の生首の口に貼り、声はしなくなった。
どうしても生首を抱えたくないので移動させることができずに上から適当なバスタオルをかけて誤魔化している。
もし、抱きかかえた生首に重さや体温特有の温かさがあったら、あの生首はそこに存在すると俺は認識してしまうだろう。そうなったら正気でいられるかわからない。いや、今も正気ではないと思うが。
しかし女の生首はガムテープに不満があるのか、ゴロリと転がったり動いたりすることが増え、その度にバスタオルが落ちた。
目が合う。女の生首はガムテープで口を塞がれても「私、29歳で死んだの」と言おうとする。
その言葉にならない音が部屋に響く。
狂いそうだった。
どうにか女を葬りたかったが20年前に死んだはずの女をどう殺すのだろう?
女は20年前も生首の状態で遺棄されていたということは、20年前も俺と同じ状態の人間が山に捨てたんではなかろうか。
逆に山ではなくて、海はどうだろうか?生首を沈めさえすれば俺はこの生首から逃げることができるのではなかろうか?
そうなったらホームセンターに錘や作業用の手袋を買いに行こう。
海に沈めるまでの間の消臭剤も欲しい。血や体液が出るということは女の生首は腐っていくものなのかもしれない。一応の臭い対策用だ。
外出する前に冷房を入れた。今日は11月のわりには暑い。腐っていく臭いで周囲に怪しまれないために海に捨てるまでの間、腐るのを遅らせようという思惑だ。うまくいくのかはわからない。
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