第10話 食堂でオカンと呼ばれている僕が、猫又娘の事情を聴く話

 私たちの先祖は、蚕という虫を外敵から守るために連れてこられたにゃ。

 その島で、平和に仲間と暮らしていたにゃ。

 時々人がいるところに行って、ご飯を食べたり。遊んだりしていたにゃ。

 でも事件は起こったにゃ……

 あれは、天気のいいポカポカした日。

 

「にゃにゃ! こんな最高の立地に箱があるにゃ!」


 そこは海辺の近く。波の音を聞きながら日向ぼっこできる最高の立地。そんなところに箱がったにゃ。

 私はすかさずその箱に入ったにゃ、めちゃめちゃ気持ちよかったにゃあ。

 気づいたら寝てたにゃ、真っ暗で、どうやら箱に閉じ込められてるようだったにゃ。

 そのまま運ばれて、やっと外に出れるようになったらこの街にいたにゃ。

 

「ど、どこにゃ……ここ」


 正直絶望したにゃ。

 見知らぬ土地、知らない風景。

 最初は帰ろうと思ったにゃ、でも海の匂いや音もわからなければ、どっちに行っていいかもわからない。

 人化して道を聞こうと思ったら、捕まりそうになるしもう疲れてたにゃ。

 そんな時だったにゃ、この食堂の前を通った時懐かしいにおいがしたにゃ。

 島にいたとき好きで食べてた魚。私は疲れきっていておなかも減っていたし、魚を盗んでしまったにゃ。


「何があったのかはこんな感じにゃ……ど、どうしたにゃ⁉」

「いや……グスッ……大変だったな。です……」

「本当に、魚盗んだのは許すよ。グスッ」

「え、えぇ? 流石に信用されすぎてこれはこれで普通に二人が心配になるにゃ」


 さっきとは打って変わって、信用されすぎて困るみより。

 シャリテとパトリは話を聞きながら泣いていた。


「誰もかれも信用するわけじゃないけど、こうして人化だっけ? するところ見たりすると作り話に思えなくて」

「もう一回聞くけど、魔族とかじゃないんだ? です」

「そうですね、妖怪って感じですにゃ」

「その妖怪って割といるの?」

「私は倭国ってところから来たけど、意外といるにゃ。鬼族とかもいるにゃ」

「鬼族はあったことあるかも」


 仕事柄いろんな場所行くが、あまり見たことない。

 それとも気づいてないだけなのだろうか。


「あ、でも倭国に一人魔族がいたにゃ。珍しいと思った記憶があるにゃ」

「魔族は倭国にいるイメージないんだが。です」

「私もそのイメージだったんですにゃ」

「あ、いないんだ」


 この街は比較的に魔族領と近いせいで、魔族がいないという感覚が分からない。

 なんなら停戦状態とはいえ、戦争までしていたんだ。切っても切り離せないどころか、腐れ縁ですらある。


「そもそも、島国に行くのめんどくさい。です」

「まぁ、それはそうだと思うけど」

「あと、戦争をしかけづらいっていうのもある。です」

「へぇ、詳しいにゃ」

「シャリテは魔族だから」


 簡単に、シャリテが魔族だとばらすパトリにガンを飛ばす。

 

「ごめんね。でも流石にフェアじゃないかなって」

「だったら、自分で言った。です」

「ごめんって」


 むくれるシャリテを撫でながら謝る。

 最近気づいたのだが、どうやらちょっとしたことならこれで許される。

 すると、みよりはキラキラした目で見てきた。


「パトリもすごい人にゃ?」

「いや、ただの食堂の店主」

「なーんだ。一般人かにゃ」

「おい、露骨にがっかりするな!」


 むしろ、魔族や妖怪なんてここら辺では見ない。

 二人が異常なのだ。


「それで、こっからどうしたい?」

「にゃ?」

「僕は、倭国とも契約してる場所あるからね。帰ることは出来るよ。だけどまぁ、魚一週間盗まれた状態でウキウキで帰れるのであれば、だけどね?」

「は、働かせていただきますにゃ」


 パトリの威圧により半強制的に働くことが決定した。


「シャリテの時もこんな感じだったにゃ?」

「わらわは、お金ないのに、ご飯に寝泊まりした。です」

「人のこと言えないけど。ご愁傷様にゃ」

「はいはい、傷の舐め合いはそこまで。さて、仕事仲間もできたことだしあれ作るか」


 みよりは何のことかわからず、首をかしげる。

 一方シャリテは何のことか察して、ワクワクし始めた。


「さっき僕はただの店主っていったよね。訂正するよ。僕はパトリ食堂でオカンと呼ばれる店主だ」


 みよりのために、パトリが料理を作り始めた。

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