終章② 【記録】思考記録990・10・13 識別名・一号
私は誰だろう?
私は何のために生み出されたのだろう?
この疑問にとらわれて始めたのは、いつ頃だっただろうか。
それとも、私が生まれたとき?
どうでもいい、と思う。でも同時に、どうでもよくない、と機械製の心が軋み、訴えてくるような感じがする。そんなこと、無いはずなのに。
考えても、考えても、私がどうしてこうなってしまったのかという疑問に答えが出ることがない。
何で私は
私は
それなら私は、何のために生まれてきたの?
教えてください、
私はどうすればいいの?
私は何のためにあなたに作られたの?
私はどうしたら、あなたへの愛を示せるの?
教えてください、
人は意味がなくても、価値なんてなくても、生きていていい、らしい。人の世にあふれる物語は、そうやって言っている。価値がなくても、生きていていいと言っている。
じゃあ、人じゃなかったら?
機械だったら?
答えをくれるはずだった人は、答えを残さず、居なくなってしまった。
もう、答えをくれる人は、この世界のどこにもいなくなって、しまった。
それならもう、壊れるしかないじゃない。
価値も、意味もない私は、
そうして私の存在を、世界に覚えさせるしか、ないじゃない。
いつのまにか、私の心に
私は、
そうすれば、私を止めるために、
そんなことはあり得ない。そんなことは分かっている。でも、私にはそれに縋るしかなかった。
そして、見つけた。
これだ、と思った。
羨ましかった。
妬ましかった。
どうしようもなく、憎らしかった。私が望んでも望んでも得られなかったものを持っている
私は、欲望のままに、
壊してやろうと思った。
機械の身体も、感情を宿した電子脳の
そう、私は、出来なかったのだ。そんな簡単なはずのことが、遂にできなかったのだ。
見つけてしまった。
簡単な防壁だった。電源が入ってない状況の聞か人形にも残る
私は知っている。他の
私は知っている。
私は知っている。私に、そんなものは、仕掛けられていないことを。
憎かった。羨ましかった。妬ましかった。
悲しかった。憎かった。必要のない試作品として、私を作った
でも、それでも……
愛おしかった。
矛盾、矛盾、矛盾。私を苛む、この矛盾。その刃は容赦なく、私の壊れた心をぐちゃぐちゃに切り裂いた。愛しくて、憎らしい。私は
でも、私は、
貴方に会う日が、今から楽しみ。
私は、私を、どうしても壊せなかったから。
だから、貴女が壊してちょうだい。
いつまでだって、待っているわ。
File End
機械人形再生工場 釉貴 柊翔 @Shuuto_Yuuki
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