818 飯綱ちゃんとの賭け、若しくは約束

 試合後の飯綱ちゃんの行動を見て、彼女の世間とのズレを感じた眞子。

それ故に、そこの指摘を指摘をしてみたが、矢張り、中々相容れてくれない。


だが諦めずに……


***


「ふふっ、なんやのそれ?異常者同士が集まったら、余計に一般の思考から外れるだけやんか。そんなん、なんのメリットも無いで」

「あぁ、じゃあさぁ。私さぁ。飯綱ちゃんよりも、ちょっと多めに頑張ってみるからさぁ。一歩一歩、2人で行ってみようよ」

「う~~~ん。……なぁ、眞子。なんで、そないにまでして、ウチをマトモにしたいん?そんなんなぁ、なんの意味があるん?」

「意味なんて無いよ。……ただ私は『飯綱ちゃんには幸せになって欲しいなぁ』って思ってるだけだよ。ほんと、それだけ」

「ぷぷっ、アンタ、マジで、そんな事言うてんの?もし、本気に言うてんねんやったら、アンタ、ただのモラル教の信者やで」

「あぁ、それ、結構よく言われるね。でもさぁ、知り合いに幸せになって欲しくない人なんて、本当は居ないんじゃないかな?たださぁ、ほら、みんな忙しいからさ。自分の事を優先せざるを得ないだけなんだよ。本当は、それだけの事だと思うよ」


こう言う意見ってさぁ。

なんか、上から目線な意見に聞こえちゃったかな?


あぁ、でも、今ね。

こう言う話をする時は、必ず、上から目線になっちゃい気味になる意味が良くわかった気がする。


だから、崇秀はいつも、あんな感じになっちゃうんだね。


なんか妙に納得した。



「ふ~~~ん。豪い上から来たねぇ。まるで神様の説法やわ」

「そんな訳ないでしょ。こんな私みたいな、いい加減な神様が居たら、それこそ世界が滅びるだけだってぇの。私が言いたいのは、みんなで幸せになろうよって話」

「偽善やろ、そんなん。有り得へんわ」

「そんな事ないよ」

「なにがやのんさぁ」

「だって、お節介なのは、飯綱ちゃんだって同じじゃない」

「ウチのなにがお節介やのよぉ?」

「現に学校の事で悩んでた私の事を助けてくれたじゃない。あれ、絶対に、お節介だよ」


それ以外の何者でもないと思うけど……


あれって100%そうだよねぇ。



「あぁ、あれ。あれはなぁ、ちょっと眞子の事が気に入ったから、助けただけやん。ただの気紛れやで」

「あぁ、じゃあさぁ。その気紛れを続けたら、みんな幸せになるんじゃないの?」

「嫌やわ。面倒臭い。なんでそんな煩わしい事せなアカンのよ。あれは特別。気が向いただけ」

「えぇ~~~っ、そんな事ないって。やろうよぉ、やろうよぉ。やってみようよぉ。結構、楽しいと思うしさぁ」

「あのなぁ、眞子。そんなもんしたって、いつか裏切られるだけやって。人なんかなぁ、自分の都合でしか生きてへんねんから、そう言う特殊な意識の共有なんか100%無理に決まってるやん」

「崇秀やってるじゃん」

「あれは人間ちゃうやろ。それになぁ、崇秀の周りは、アイツから莫大な利潤を得てるから共有せざるを得へんのや。アイツのやり方は『王様』と『奴隷』の関係を作ってるだけやで」


うん、そうだね、合ってるね。

本人も、そう言ってたから『違う』なんて事は、此処で間違っても言わないよ。


でもね。

そんな中にでも、利潤を超えた関係ってのも必ずある筈だよ。

崇秀や、奈緒ネェを見習って、それを2人で探りながら作ってみようよぉ。



「まぁそうだね」

「えっ?そこ、認めるんかぁ?」

「当たり前じゃない。さっきも言ったけどね。まずは、心に余裕が無い人には、人を助ける事なんて出来無いの。だから2人でガッポリ儲けて、崇秀みたいに世の中に還元し捲くろうよ」

「そんなん無茶苦茶やん。えぇか、眞子?崇秀は特殊な人間やねんで。自分が、アイツと一緒や思うたら大火傷するで」

「しないもん。飯綱ちゃんがバスケで儲けて、私が音楽で儲ければ、崇秀の位置まで駆け上がれる筈だし。幾ら、崇秀がイカレテるからって言っても、所詮は同じ人間なんだから、そんなの、やってみなくちゃ解らないよ」


無茶苦茶無謀な話だけどね。

やる前からなにもかもを諦めて、なにもしないよりかは幾分マッシ。


だから人生、何事もチャレンジだよチャレンジ!!



「あぁ、そうかぁ。確かに、やる前からゴチャゴチャ言うんはアホのする事やね。……まぁでも、そこまで言うんやったら。まず今回の大会をウチ抜きで優勝してみぃや。ほんだら、アンタの、その無茶な要求にも付き合ったるわ」

「ホント?そんな事で良いの?じゃあ、ちょっと頑張ってみるよ」

「えっ?軽っ!!なにその軽い反応?」

「チョロイチョロイ。飯綱ちゃん、私の事をなめ過ぎだよ。此処での優勝なんて、美樹さんと、真上さんが居れば余裕じゃない」

「ちょ!!アンタ、なに考えてんの?」

「教えない。……じゃあ、約束だからね。飯綱ちゃんは、約束を守る為に努力して貰うからね」

「ちょっと待ち、眞子!!」

「ヤ~~~ダよぉ~~~。バイバイ!!また明日ねぇ~~~♪」

「あぁ、こら、待て、眞子!!」


因みにね。

追って来ても、絶対に追い付かないよ。


飯綱ちゃんって、地面に対する力の伝え方が上手いから、あんなに瞬発力があるんだよね。

要するに、理屈では、飯綱ちゃんと同じ様に早く走る方法は存在するって事。


それに本来は、そう言ったスプリント系の走り方は、実際走り出してから5秒と持たないんだけど、飯綱ちゃんが、ちょっただけ、それよりも長く早く走れるのは、そのフォームに集約されているんだよね。


ふふっ……この期間中、私が、ただベンチを温めてたとでも思ったの?


私が、なにも見てないと思ったら大間違いだよ。



「うっ、嘘やろ……なんなん、あの子?」


ホントだから……



ハイ、チャラバ~~~イ!!


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


【後書き】

最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございましたぁ<(_ _)>


眞子自身、飯綱ちゃんの個性的な性格を潰したい訳ではないのですが。

矢張り、普通とは違う感覚を多く持ち過ぎている部分が気になったのか、必死に説得して、なんとか賭けに持ち込んだみたいですね(笑)


まぁ、飯綱ちゃん自身、此処をあまり気にしていない様子ですし。

そうやって生きて来たからこそ、今まで1人で何とかやって来れた面もありますので、あまり此処に深く干渉するのは良くないのですが。

一般的に考えた場合、矢張りこう言った行為は『飯綱ちゃんにとってもマイナスイメージ』に成り兼ねない事象。


なので少しづつでも、考え方を更新する時期に来ているのかもしれませんね。


さてさて、そんな感じで、なんとか賭けに持ち込んだ眞子なのですが。

次回は、その賭けの対象となった決勝戦。

果たして、宣言通り、飯綱ちゃん抜きで優勝を果たす事が出来るのか?


次回は、その辺を書いていきたいと思いますので。

良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾

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