813 完全に説得は出来ずとも

 お互いの意見が噛み合わないまま。

真上さんに問われた『どうすれば、倉津君がヤクザから脱する為のケジメを付けれるのか?』っと言う質問。


果たして眞子は、これにどう答えるのか?


***


「さっきも言いましたけど。アイツが倉津の名前を捨てる事……ただ、それだけです」

「えっ?でも、それは……」

「そぉ。それは、とても難しい事。でもアイツが、本気で王家さんや、崇秀や、奈緒ネェ、それに他の方々の事を大切に思えるんなら、これは、なにがなんでも、やり通さなければならない事だと思う。それが出来なきゃ、本当にヤクザになって終わりだからね」


……私には出来なかった。


こうなったからこそ、その蟠りから抜け出す事が出来たのは紛れもない事実だけど、普通の神経じゃ、とてもとても、倉津組の長男である真琴ちゃんが、そんな大それた真似は出来やしない。


……でも、今にして思えば、方法が全くなかった訳でもない。


崇秀がアリーナで深夜に言っていた『自分の価値』と言うものを世間に知らせてしまえば、それは世間からの保護対象になる可能性はある。

それが例え同情だろうが、なんだろうが、そこから切り離す事は可能だったと思える。


でもね。

この話以前にも崇秀は、最初にやったライブ(序章17話参照)でも、そのヒントを明らかに出していた。


『わかんネェか?立派なベーシストになりゃ……ヤクザにならずに済むんじゃねぇか』


彼はハッキリそう言っていた。


崇秀は、いつもこうやって、アイツの為に先読みをしてくれていたんだけど、アイツは、なに1つ気付かなかった。

それどころか、気付いていたにも関わらず、面倒臭いと言う『横着な心』や、無くてもいい様な、どうでも良い『変なプライド』から、崇秀が考えてくれた意見の真意を先送りにしていた。


いつも、そうやって解ったフリをしていたに過ぎなかった。


アイツは……結局、なにも変われなかったし、親身になってくれている崇秀の言葉すら信じきれなかった。


そんな馬鹿な奴だから……恐らくは、この話自体無理だと思う。



「・・・・・・」

「王家さん。この話は、王家さんが悩む話じゃないんだよ。これは、アイツだけの問題。自分でしか解決出来無い問題なの」

「そう……ですね。私は、なんて無力な人間なんでしょうね。そうやって苦しんでる友達も助けられないなんて……」

「違いますよ。今まで王家さんが、アイツを色々支えて来てくれてたのは事実。でも、そろそろ、人に甘える時期は終わりだと思います。この行方不明の間に、アイツが、どう変わるかが最大の問題なんじゃないですかね」

「そうですね。頑張って欲しいですね」

「はぁ……ホント、王家さんって良い人ですね。……でも、ひょっとしたら、真琴ちゃん、今、王家さんが言われたみたいな事を感じて旅をしてるのかも知れませんね」

「そうですよね。私も、倉津さんが、どこかの空に下で頑張ってると思いますよ」

「だと良いんですけどね。……あぁ、それはそうと王家さん。急に、変な話してごめんね。私ね、王家さんみたいな良い人には、絶対、不幸になって欲しくないから……つい、イラナイお節介を焼いちゃったみたい。……ホントごめんね」


これはね。

心の底から思ってる本心ね。


でもね。

此処まで言っちゃうと、まだ私と、真上さんとの関係が、そんなに深い関係じゃないから不思議に思われちゃうだろうね。


『なんでそこまで?』って事になるだろうしね。


だから、早急に話題を変えよ。


第一……アイツの話なんか、別に、もぉどうでも良いし。



「あの、向井さん」


あっ、ヤッパリだ。

表情からして、明らかに疑問に持ってる顔だ。


……でもさぁ、もぉ本当にアイツの話なんか一言たりともしたくない心境だから、ごめんね。


悪いとは思いますが、その話は切らせて貰いますね。



「あぁ、あの、王家さん。こんな話の後で、なんなんだけどね。良かったら、私の事を向井さんじゃなくて『眞子』って呼んで貰えると嬉しいんだけどなぁ。それでね。王家さんの事を『真上さん』って呼ばせて貰えたら、もぉ1つ嬉しいかなぁ。……なんて、急に厚かましいかな?」

「えっ?あっ、あぁ……あの、私の事は、お好きに呼んで頂いて結構ですよ。それにですね。私も、向井さんの事を『眞子さん』と、お呼びしたいと思っていた所でしたので」

「あぁ……ありがとう、真上さん。あんな話をした後だって言うのに……」

「いえいえ、先程の話は、きっと眞子さんが、私の身を案じて頂いての事だと思いますので……それに私自身が、少し人間関係と言うものを安易に考え過ぎていたのかも知れませんしね。……沢山のご忠告、ありがとうございます」

「えっ……って事は」

「いえいえ、ごめんなさい。そこは、まだ割り切れてないです。ですが、眞子さんの意見は、1つの貴重な意見として心に留めて置きたいと思います」

「そうですか。……良かったぁ」


ホントに、無駄な異物でしかないんだから、サッサと真上さんの中から消えて無くなれば良いのにね。


なんでそんなに、しつこくこびり付いてるんだろうね。


もぉ忘れちゃえば良いのに……



……っで、この後、密かに、そんな心境になりながらも、此処からは話題を完全に変更させて、私と、真上さんは、結構、遅くまで、楽しく真上さんの店の話を話し込んだ。


だって、真上さんって服飾関係の方だから、そう言うので色々知りたい事もあるしね。


どこかの馬鹿じゃないんだから、女にとって『身嗜み』は、本当に大切だからね。


***


 ……ハイハイ、そんな訳でして。

馬鹿の嫌な話なんかスッカリ忘れて、この後は真上さんと色々お話が出来たので、ある程度、上手く和解が成立しました。


それで翌朝には、仲良く2人でバスケの会場まで向かいました。


あぁ因みにね、飯綱ちゃんは、早朝から会場に行って練習をしてるみたい。

そんで美樹さんと、エディさんは仲良く2人で会場入りする予定みたいだから、此処は邪魔しちゃ悪いしね。


そんな訳で、真上さんと2人で会場入りした訳。


***


 あっ、そぉそぉ。

特別に、なにかを気にする様な話じゃないんだけどね。


その会場入りをする際に、歩道を歩いていた時、どこから聞こえたのかも解らないんだけど『余り、人を否定するもんじゃないですよ』って言葉が、何所からか聞こえた気がしたのよね。


何所の誰が言ったのかは知らないけど、何故だか……妙に頭に引っ掛る言葉だった。


まぁ、多分、昨日の真上さんと話した会話が引っ掛ってたんだろうね。


けど、何気に聞こえた事が、こんなに引っ掛る様だったら、あの件も『自分自身でも、もう少しは考慮すべき点』なのかも知れないね。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


【後書き】

最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございましたぁ<(_ _)>


倉津君が世間からヤクザと認識されない方法は、矢張り『足抜け』

ただ、そうは言ったものの。

並の組員ならそこまで難しい事ではなくても、組長クラスの息子と成れば、かなり難易度が高いのは言うまでもない。


まぁ、此処にも色々な方法があるのですが。

今現在、倉津真琴と言う立場は空位に成っているので、考えても仕方がない事ではあるんですけどね(笑)


さてさて、そんなアクシデントがありつつも。

次回からは再びバスケの大会に場面を移したいと思いますので。

良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾

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