812 お互い譲れぬ激論

 バスケの試合後、同室に成った真上さんから、倉津君の行方を聞かれる眞子。

だが今の眞子の立場としては、真上さんのそんな気持ちとは真逆に『倉津君の存在を消して欲しい』と考え、少々真上さんと口論染みた状況になっていた。


***


「王家さんは間違ってます。真琴ちゃんと、王家さんじゃ、明らかに住む世界が違うんですよ。真琴ちゃんのマキゾイを食って、王家さんまで謂れの無い誹謗中傷を受ける必要なんてないんです。あんな奴は放って置けば良いんですよ」

「どうしてですか?……どうして向井さんは、そんなに倉津さんを嫌うんですか?ちょっと言葉に棘が有り過ぎますよ」

「私は……私は、アイツの事が心底嫌いなんです。上辺では探してるみたいな事を言ってますけど。……本音で言えば、消えてくれて清々してます。アイツなんて居なくて良いんです」

「向井さん、そんな事を言っちゃダメですよ。倉津さんは、本当に良い人なんですよ」

「なんと言われても、あんな奴は大嫌いなんです。アイツは、いつも調子良い事バッカリ言って、人に頼ってばっかりだし。そのせいで崇秀や、奈緒ネェに迷惑掛けるばかりか、それだけじゃ飽き足らず、今度は王家さんにまで迷惑を掛け様としている。そんな奴、親戚として、世間に顔を向け出来無くなるだけなんですよ。……ヤッパリ、あんな奴、大嫌いです」


本当にね。

今にしてアイツの行動を振り返ってみれば、アイツの行動は全てが他人に依存してて、迷惑バッカリを掛けるだけの存在だった様に思える。


それなのにアイツは、そんな事は、お構いなしにノウノウと生きていた。


本当にカスで!!クズで!!生きてる価値すらないゴミみたいな人間だ!!


自分がそうだったと思い出しただけでもゾッとする。


だから……それが今の私には、どうしても許せない。

この際だから、本当に『存在しなかった事になって欲しい』すら思ってる。



「向井さん。……そうじゃないと思いますよ。人間なんて誰しもが、他人に迷惑を掛ける生き物なんですよ。私にしても、そうですし。皆さんや、沢山の方にご迷惑を掛けています。……迷惑を掛けない人間なんて、何所にも居ませんよ」

「解ってます。……だとしてもですよ。アイツは、ちょっと普通じゃないんですよ。他人に迷惑を掛けても、そこに胡坐を掻いてるだけの人間で、到底、王家さんが付き合うに値しない人間なんですよ」

「あの……どうして向井さんが、私の交友関係にまで口を出されるんですか?それを向井さんに言われる筋合いは、流石に無いと思うんですが」

「どうしてですか?どうして、わかってくれないんですか?アイツなんかと付き合っても、なにも良い事なんてないんですよ。忠告してるんですよ。アイツなんて忘れちゃった方が、王家さんにとっては幸せな筈なんです」


『自分が忘れて欲しい』

……からって、もぉ、そんな事を言ってるんじゃない。

自分の都合だけで、他人と仲良くしたりする『罪』の意味が解ってないから、真上さんには、アイツの事を忘れて欲しいんだよ。

アイツが気軽に他人と接する事で、知り合いが受ける世間の目を考えてなかったから、こんな事を言ってるんだよ。


ヤクザが……『一般人と付き合おうなんて思うな』って話なんだよ。


そう言うの、厚かましいんだよね。

ヤクザの息子なんて、将来的には100%世間に迷惑しか掛けないん存在なんだから、出来れば早々に死ねば良いんだよ。


……消えて無くなれば良いんだよ。



「ごめんなさい。向井さんの、その感覚は、私には解りません。倉津さんが、人と接して、なにが悪いんですか?向井さんに、倉津さんの気持ちが解りますか?倉津さん、友達になる前に、必ず最初に『自分がヤクザの息子』だって言うんですよ。その言葉を言う、倉津さんのお気持ちが、向井さんには解りますか?」

「王家さん、それも間違ってるよ。その言葉はね。アイツが、他人に同情を誘いたいが為だけに吐いた言葉に過ぎないんだよ。そう言えば、みんなが『可哀想だ』って同情してくれると思ってるだけなんだよ。そんなの、自分が可哀想だって言いたいだけなんだよ」

「どうしてですか?どうして、そんな風に思うんですか?なんでそこまで……」

「王家さん。……私ね。根本な部分で、ヤクザは人と付き合っちゃダメだと思うの。そりゃあね。私自身、かなり私情は絡んでるよ。でもね。もし、本当に真琴ちゃんが相手の事を大事に思うなら、その人を、そう言う世間の冷たい眼に晒す様な真似はしちゃいけないと思うの。……此処、解って貰えるかなぁ?」


なんか自分で言ってて、凄く悲しくなるけど。

現実的に言っても、本当にヤクザは、そう言う世間から嫌われる存在でしかない。


これは眞子になってから、漸く気付けた事なんだけどね。

ヤクザが一般の人に嫌われてる以上、ヤクザに与する人間は一般人とは絶対に付き合っちゃいけない。


そこにズカズカと土足で入る様な真似は、絶対にしちゃいけなかったんだよ。


でも、アイツは馬鹿だったから、それを『みんなが受け入れてくれてる』と勘違いしていたみたいけど、結局は、そう思ってくれてる親切な人達を、そう言う『世間の白い目に晒して居た』に過ぎない。


だから真琴ちゃんが、もし仮に今帰って来ても、あの記憶を取った時の真琴ちゃんに戻る訳だから。


彼は……一生それには気付かずに『他人の親切』だと思い込むだけだろう。


だから……もぉ2度と帰って来ないで。


本当に消えて……



「わかりません。世間の目がなんですか?そう言うの関係なくないですか?」

「王家さんは、本当に解ってないよ。まだね、王家さんは子供だから、そんな事が言えるだけなんだよ。私ね。倉津の親戚だって言うだけで、どれだけの差別を受けたか解る?どれだけ私の家庭が、あの倉津って名前に迷惑掛けられて来たか解る?世間ってね。綺麗事を言っても、そう言うもんなんだよ」

「そうだとしても。それじゃあ余りにも……」

「理不尽だよ。でも、その理不尽が罷り通るんだから、それも真実なんじゃないかな?ヤクザの息子に生まれてしまったら、ヤクザ肩書きを捨てるまでは一般人と関わっちゃイケナイ。……それが、ヤクザの息子に生まれた宿命なのよ」

「でも、それじゃあ、倉津さんが余りにも可哀想ですよ。倉津さん、本当に、なにも悪い事をしてないじゃないですか。そんなの本当に理不尽ですよ」

「王家さん。……人が好いのは良い事だと思うよ。けど、自分の周りの人の事も考えないとダメだよ。王家さん1人の我儘で、自分の家族まで、そんな風に見られてるんだよ。……私は、決して、それは良くない事だと思うけど……その辺は、どうかな?」


ごめんね、真上さん。

アイツさえ居なければ、こんな嫌な話を真上さんが聞かなくて済んだ話なのにね。


不用意にアイツが、真上さんに関わっちゃったから……こんな事に成って、ごめんね。


それに真上さんは、なに1つとして『我儘じゃない』んだよ。


本当に心の綺麗な人だから……


もぉ……アイツの事は綺麗サッパリ忘れて欲しい。



「それは……」

「私は、なにも、ご両親と、アイツを天秤に掛けろって言ってる訳じゃないんだよ。『もぉ忘れた方が良いよ』って言ってるんだよ」

「でも、それじゃあ……」

「あのね、王家さん。もしアイツが、王家さんと『今後も、お付き合いを続けたい』って言うんなら……それは、自分のすべき事をしてからじゃないとダメだと思う。だからアイツが自分自身でケジメを付けない限り、お節介かも知れないけど、私は、アイツと王家さんの関係は認めない。……絶対に反対し続けるよ」

「……あの、向井さんの言う『ケジメ』って、なんなんでしょうか?それは倉津さんに出来る事なんでしょうか?」


あのままの真琴ちゃんだと、本当に一生掛かっても出来無い事だと思う。


あの子は、私以上の甘えただから……心底無理だと思う。


でも、聞かれてる以上、話は続けないとね。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


【後書き】

最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございましたぁ<(_ _)>


スッカリ一般的な人間の考えに成ってしまっている眞子。

そこで見えて来たものは『ヤクザは、一般人と付き合いを望むべきではない』っと言う思考。


まぁこれ自体は、倉津君と眞子と言う2つの思考を掛け合わせたからこそ明確に見えて来たものなのですが。

大分、考えが偏っている様にも見えますね。


さてさて、そんな中。

次回は、真上さんに問われた『倉津君のけじめのつけ方』を眞子の考えで答えて行く訳なのですが。


果たして、それは、どの様な物なのか?


その辺を書いていきたいと思いますので。

良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾

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