思ひ出に浸かる。

千流-ちる-

Forget-me-not

二月の中旬だった気がする、初めて君と出逢ったのは。


気づくと君が隣にいる、昔からある近所の喫茶店のように何の違和感もなく、


いつも僕がひとりの夜に


君はいつもきまって僕に「     」と微笑みながら話しかけてくる。


そのセリフを僕は毎回思い出せない。朝目覚めると夢の内容を思い出せないように。


ただそこに悲しさとほんの少しの嬉しさが残るのを僕は噛み締めた。


もしかしたら本当に君との時間は夢だったのかもしれないと今になって思う。


でもたしかに君はそこにいて僕と同じものを見て同じ話をし、同じ時を共有したんだ


夢であっていいはずがない。


君との時間は永遠だと思っていたし君もそう思ってたに違いない、


そんなあるとき君が言った。なんとなく僕にも分かった、今日が最後だって。


「私もいかなくちゃ」 


あぁ、もうそんな季節か、不思議と悲しくはなかった。出逢いがあれば別れがあると


知っていたから。


じゃあねと君は言う、また会えるかな?と僕は聞いてみる、君はまた微笑んで


「     」と言った。


いつの間にか視界は青く澄んでいた。夜が明けて外はもう春になっていた。


いこう、君に逢いに









  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

思ひ出に浸かる。 千流-ちる- @huyunoringo

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ