第45話

「これかれ話すことは、あなたが3歳の時に起きた事です。健吾はその時の記憶がないし、お父さんと相談した結果。もし、その時の関係者と出会えた時、ちゃんと話すと決めて今まで言いませんでした」


 そう言葉にすると、目の前の母親は強く唇を一回噛み、鼻から息を大きく吐いた。それと同時に、薄茶色に燻んだ新聞の切れはじを自分の前に置く。


「始めてに言っておきます。この一件を起こしてしまったのは全て私にあります。それだけは、肝に命じて聞いてほしいの」


 先程に増して凄みある眼差しが自分に注がれ、思わず生唾を飲む。そんな中、母は再び口を開く。


「あの時は、とても朝夜暑い日が続いていた昼下がりでした。ただ、気持ち風吹いていたので窓を開けて私は、3歳だった健吾と縁側で昼寝をしていたの。当時6月だというのに、夜も寝つけずにいた時で、そんな折昼間に心地風が入ってきてね。私は熟睡してしまったの。そして目を覚ました時には、横に寝ていた筈のあなたが居なかった。私は飛び起きて、家中を探し回った。でもいない。もしやと思い、外に駆け出すと、目の前の浜辺が何やら騒がしくて。まだこの時期には、海の家とかは再開しないし、うちの前の浜辺はわりとマイナーな所だから、いざ海開きをしても地元の人が楽しむ程度。だから直ぐに何かあったと思ったわ。案の定警察の人と、地元の住人。後見たことのない家族が警察に何か言い寄りつつ海を見ていの。私も同じように海を見ると、かなり沖の方に浮き輪のような物が浮いていて。それをじっとみんな心配そうに見ていたわ。どうやら離岸流が原因だったようだけど。すると、警察の人が近づいてきて、話を聞くとあの所にいるのは健吾らしい事がわかって。どうやら健吾は、私が寝てる間に一人で浜辺で遊んでいて、その時に溺れてしまった。しかし近くにいた少年が助けに入りあなたを助けた。ただ、その時に離岸流に巻き込まれ沖まで流されてしまったと。私は立ち尽くしかなかった。そして暫くしてから、船により遊具を回収。するとその時おろされたのはあなただけ。助けてくれた少年の姿はなかったの」


 母の言葉が止まる。懸命に涙をこらえているようで、声が震え始めていた。すると、彼女は自分に激をとばすように、強く拳を握り締めた。


「その後、少年は3日後に隣の浜辺に打ち上げられている所を発見され、死亡が確認されたの。その子の名前は羽鳥学君」

「えっ、ちょ、ちょっとまさかだよな…… ほら、同姓同名もあるしさ……」

「そうね。そう言うこともないとも言い切れない。ただ、初めて羽鳥さんに会った時ね、あの時、浜辺で立ち尽くす子供の面影に似てるのよ。それに羽鳥さんのお兄さんの話を今聞いて確信したわ。羽鳥さんは学君の弟さんだって」

「何だよそれ…… 俺が羽鳥さんのお兄さん殺したようもんじゃないかよ……」

「お母さん最初に言ったでしょ。これは私が全て悪いの。助けに行ってくれた子は勿論。小さいあなたがいながら、目を話した私の責任なの」

「でも!!」

「でもじゃない!! 当時の健吾を責める人なんていない。責められるべきは私なの!!」

「っつ……」

「沖に流れてから、健吾も暫く検査入院して、結局羽鳥さんの件は新聞で知ってね。本当に取り返してのつかない事をしてしまったと…… 何度も悔いて…… でも、たとえ罵倒されようが何をされようが、どうしても羽鳥さんに謝罪がしたかった。なので、あなたが退院後。警察や掲載されてた新聞社に羽鳥さんの住所を問い合わせたんだけど、その事故直ぐに引っ越してしまったと言う話を耳にした以外、個人情報だからと言って教えてもらえなかったの…… そういう事もあって、健吾にはある程度成長するまで頑として浜辺に入る事さえ許さなかった」


 すると、近くにあったテッシュを一枚手に取ると目頭をおさえた。


「だからね。結局あの時からお母さんちゃんと謝れてないし、報いも受けてない。それがどうしても自分自身許せないでいるの」

「お袋……」

「だから、あなたがプールの監視員のバイトを始めたって言ったとき、因果応報って思たわ。そうしたら、今日の出会い。凄いわね。こんなこと起こるんだから……」


 少し落ち着いた、母が苦笑を浮かべたて見せるも、その話の重大さとあまりショッキングな内容に、自分の中で整理が出来ない。そんな状況の中、自身の今出来うる処理能力をフル回転させ、母の言った内容を脳裏で反復する事暫し。今度は自分が母を見る。


「お袋。今の話が本当にしても、被害者が俺と同じバイトの羽鳥さんっていうのは確定じゃないだろ?」

「そうね。確定ではないけど、今日会った羽鳥さんの年齢や話の感じだと、かなりの確立で被害者家族の方だとは思う……」

「…… お袋。少し俺に時間くれない?」


 そう言い、目の前の新聞を一読し、自分は強く拳を握り締めた。



※※明日20時以降更新。烏滸がましいですが、星、感想頂けると至極嬉しいです※

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