第27話 2レーン
「いやー バイト終わりの飯は本当にうまいな」
「そうですね。剛さん。最近は天気も良いせいかお客も多くて…… でも運営上はああじゃないとやってけないですかね」
「おうよ!! 去年なんて、ゲリラ豪雨だの、かたや猛暑日で、休場とかもちょくちょくあったから、プール場自体稼働してないんだわ」
「そうだったですね。確かに去年は暑かったイメージあります」
「だろ。今年はそれを考えれば屋外プールを楽しめる良い年かもしれないな」
「はいお待ちっ」
威勢の良い声がこじんまりとした店内に響き、目の前の鉄板には香ばしく焼けたお好み焼きが二枚運ばれてきた。ここはバイト行きつけの鉄板料理屋じゅうじゅう亭。
今日は梶山が、自分にご飯を奢るという名目で、2人で来店している。彼自身ある特定の事に執着さえしなければ、非常に面倒見の良い楽しい先輩。だが、どうしても突出してしまう話題がある。今回も多分その事について聞きたいのではないかと、ある程度覚悟はしていたが、その読みは当たる。
「まあ。食べてくれよ」
「あっはい。頂きます」
手慣れて作業で、ソースと青のりをトッピングすると、店中に食欲を誘う匂いが広がった。それを切り分けると、ほぼ同時にそれを口に運ぶ。
「はうはうっ、うっまー」
「火傷すんなよ、健吾。にしもここのうまいな」
「はい」
そう言い、一枚のお好み焼きをたいらげたのち、梶山が二杯目を注文していたウーロン茶を口に含む。
「なあ。健吾」
「はい」
「実は、お前に聞きたいことがある」
内心来たと思いながら、彼の方に視線を送る。
「単刀直入に聞くが、大河さんの妹さんとは何にもないんだよな」
「ないですよーー だいたい今回の事はイレギラーというか。たまたま米内さんに頼まれて届けに行ったらばったりって感じで」
「あああぁああーー どうして米内さんはその大役を俺に言わなかったんだーー」
「タ、タイミングの話かなと……」
「因みに」
いきなり彼の顔が、自分に近づく。
「LINEとか交換とかしたか?」
「い、いやしていません」
「本当か?」
「は、はい」
実の所は、スケジュールを教えた時に、もし何かの時にということで、メールアドレスを交換はしていた。だが、流石にそれを彼女の許可なく教える事など出来るわけがない。それに、梶山の性格上、この勢いでつっぱしると彼女に何からの迷惑はかかるのは目に見えてる。実々瀬もこの前の『お義兄さん』一件で、彼に対しての要注意人物リストに入っているのは確定事項と言っても過言ではない。
そんな事を踏まえても、口が裂けてもこの情報は梶山に知られるわけにはいかないのだ。
(すいません。剛さん)
心中で許しを乞いながら、彼の追求を苦し紛れの笑みを浮かべつつ、かいくぐるしかなかった。
※※明日20時以降更新。烏滸がましいですが、星、感想頂けると至極嬉しいです※
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