棺の中の私 お題:2つの葬式

生前葬はついにここまで来たのかと、川空夕詩は思った。


今、目の前には私はいた。18歳の私。女性が一番美しいと想定された肉体。それはあながち間違っていないが、夕詩は葬儀会社の経費削減だと思った。クローンを養培する時間を短くするためだ。


私は26歳になった。18歳の私より胸がさらに無意味に大きくなっている。だがもうそれはもとより何の役には立たない。私はこれから対異星人強襲部隊と合流し、敵母艦の中心で自爆する。


私はそのためにつくられた。私の価値はそれ以上でもそれ以下でもなかったが、人間の世界で生きてしまった私には周りの普通の人々が葬儀を上げるべきだと、研究所に抗議した。


だから私はもう一回作られ、ここで一度死にこうやって18歳の姿のままで死化粧をして棺に収まっている。


葬儀されるため、私以外の人間を慰めるために生まれた私。


きっと彼女を知っているのは私だけだ、私以外の周りの人間は彼女を私と思うのだろう。だからここに二人分の葬式があると思っているのは私だけだ。


私は死んでいる彼女にキスをした。それは手向けだった。死ぬために生まれた彼女への祈りだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る