思い出

何度も夏が私を置き去りにする。

幾度となく夏は訪れるのに、何度願っても、恨んでもあの時へは戻れない。

あの人が残した香水(残り香)も、もう薄まってしまった。

いつになれば叶うのだろう、そんな無意味な疑問は捨ててしまいたい。

薄っぺらい「それ」を手に、私は海と向き合う。

押し殺してきた──は、幾ら奥へ押し込もうとも弓矢の弦のように力強く跳ね返ってくる。


あなたは見ていますか、今、どこにいますか


幾ら声を張ったって返事は無い。

この想いは叶わない。

それでもう、いいじゃないか。


言えなかった言葉を胸に、私は天を仰いだ。

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