第16話 夢の後の正夢

――――――――――――。


『ルカ……。どうにかなりそう。』

『久しぶり。』

『……』


たった一言。その声だけで涙が溢れて止まらなかった。


『俺だけ見ててよ…俺だけにしてよ……お願いだからさ……殺してよ……』

『…あんた、あの時わかってて出たんでしょ?轢かれたくて出たんだよね?ちがう?』

『そう…。』

『うん。わかってるからいいけどさ。』

『今からこれる?うちおいで。』

『いく。』



――――――――――――――――――。


「ルカ!!…」

「わかってる。」


僕はルカに手を引かれて寝室へ連れていかれた。

薄暗い部屋の中で目隠しをされそうになって、


「やめて。」と言うと、

「怖い?と聞く。」


「怖い…ルカの目がないと怖い。」


「わかった。ならしない。」



――――――――――――――――――。


ルカは夢の中のルカだった。


何度も何度も気が遠くなりそうになって、頬を叩かれた。

間違いなく現実で、間違いなくルカだった。



でも…でも…『愛』ではなかったし、

下から吐き出すことはしなかった。

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