Ep013 ネット恋愛編 十把一絡げにしないで

朝5時に彼から「おはよー」とLINEが届く。彼は寝落ち電話をしない時は目覚めるとLINEするようになっていた。私が返信すると話したがった。私も彼と話したい。


彼はお友達とトンカツを食べ行く予定だったので朝に電話で話したきり連絡しなかった。彼のことをはっきりと好きと認識してから友達時代のように気軽に連絡を出来なくなっていた。


夕方に「トンカツ美味しかった?」とLINEする。ずっと彼からの連絡を待っていたが努めてさりげなさを装った。「美味しかった!話せる?」「うん」直ぐに電話が掛かってきた。


トンカツが美味しかったことや友達とのことを嬉しそうに彼は話した。その話が尽きると彼女の惚気話を始めた。彼女との会話を再現し彼女って本当に可愛いと話した。「彼女と仲がいいんだね」と努めて明るく返事をした。


私が彼のことを好きなことを知っているのに何でこんなに惚気話が出来るのだろうと内心かなり苛ついていた。毎日、長電話し心を許しているから何でも話せるのか、それとも単純に無神経なのか彼が分からない。


次にいつもようにネットで出会った女性たちのコレクションみたいな話を始めた。私の苛立ちを我慢出来ずに「私だってネットで出会った人だよ?そういった話をずっとされると十把一絡げにされた気分になる。面白くない!」と言い捨て電話を切った。


「いくら好きでも自分を大切に扱ってくれない人とは関係を続けられるほど」とLINEし続きを入力していると彼から電話が掛かってきた。


彼は切なげに私の名前を呼ぶ。私は怒りのままに「私は友達でも私を特別に扱ってくれる人としか付き合っていけない!あなたのことは好きだけど私のことを特別扱い出来ないのなら、もう連絡して来ないで!」と訴える。彼のことを好きになり過ぎて失くしていたはずの激しさが蘇る。


この後、彼がどう話したのか覚えていない。宥め透かされ説得され元の関係に戻らされた。


金曜日は明日が休みの彼女と電話するだろうと夜の電話は控えた。彼からも連絡がなかったので彼女と電話しているのだろう。久しぶりの独り寝。彼の声を聴かないと寝られなくなっていた。


0時33分「話せる?おやすみの声だけでもいいから聴きたいな」と送ったが返信はない。「だめかーおやすみ」と送り寝つこうとしたが眠れない。1時43分に「眠れないよー」と訴えると彼から電話が掛かる。


彼が優しく私の名を呼ぶ。「声が聴けて嬉しい。でも彼女と電話していたのではなかったの?」「彼女が寝たから切って来た」「そっか」それが嬉しいのか嬉しくないのか分からなかった。


彼の声を聴けた喜びを胸に安心して私は眠りについた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る