Ep009 ネット恋愛編 それは恋でもなく愛でもないことは分かっていた
それは恋でもなく愛でもないことは分かっていた。
出会った当初の頃のように「さん」付けで読んでもらうようお願いし、彼とは少し距離を置いて話すように心掛けた。でも毎日の電話は止められなかった。
自分の気持ちを感情を込めず客観的に話すようにしていた。客観的に話すことで自分のことを明け透けに伝えるようになっていた。彼もまた、そんな私を察し自分のことを包み隠さず話すようになっていた。
性のことについても話すようになり初体験のことや、遠距離恋愛している彼女とはなかなか会えないので電話でのHのことなどの詳細について話した。
そんな風に話す習慣がついた、ある日の夕方。彼が「今日はうちの両親がする日だわ」「なんで分かるの?」「いつも両親と一緒に寝ている妹がリビングに寝かされる時はやる日なんだよ」
「そんな露骨なの?」と苦笑する私。「父さんが浮気したことがあって、それから浮気防止に定期的にするようになったんだよね。両親がするのを分かるって本当に嫌だ。そういえば旦那とはしてるの?」と彼が聞いてきた。
「そこね悩みどころなの。昨年、第一志望を落ちた娘に対して酷い対応をした旦那さんと大喧嘩して、それまで月一回くらいで定期的にしていたけれどしなくなったんだよね。した方がいいのか、このまましない方がいいのか悩んでるんだ。」 「だったらさ今日娘たちいないのでしょ?誘ってみたら?」「えっ?」「今日、俺に話したことがきっかけになってするようになったらいいじゃん。自分から誘ってみて。それで後で俺に報告して。」「うん、分かった。」
Z私は二人きりだったので夕飯前に旦那さんを誘ってみた。旦那さんはそれに乗ってくれてすることになった。しかし入らなかった。
何度か頑張ってみたけれど入らなかったのだ。入らないことで旦那さんのものは萎み、久々の夫婦の営みは終わった。
私はなんだか無性に傷付いた感じがしていた。 夜になって彼に報告する。「どうだった?」「それが何故だか入らなかったの」と明るく話しながらも、落ち込み沈む私を察し彼は意外な提案をしてきた。
「俺と電話でしてみる?」 「えっ?」「長い間してなくて感覚を忘れちゃったのでしょ?俺と電話で試してみようよ」「電話で?したことないよ」「一人でしたことはあるでしょ?それを電話しながらするだけだと思って」「うん・・・出来るかどうか分からないけれど試してみる」 「電話でしたことないからよく分からない。どうしたらいい?」「どうして欲しい?」私は普通にする時のことを考えて「名前を呼んで」とお願いした。
電話でするのは初めてでぎこちなかったと思う。ただ互いに名前を呼ぶだけの行為。でも彼の甘い声でそれだけで私には十分だった。彼に名前を呼ばれながら私は果てた。 一人でするのとは比べ物にならないくらい深い快感だった。
その快感に私は驚いた。電話でするのはこんなに良かったんだ。彼にそのことを伝える。彼に名前を呼ばれて果てて、愛された感覚に私は満たされていた。
彼は言うなればセラピーみたいな気持ちだったと思う。
それは恋でもなく愛でもないことは分かっていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます