#41
――グレイシャルは、ガルノルフらと共に食糧庫から中庭へと出ていた。
そこで彼らは城内にいた帝国兵を
ガルノルフのウォーハンマーが
もちろん帝国兵たちも反撃してくる。
だが彼らは剣や槍を構えて応戦したが、すでに潜入していた赤の女王のメンバーらも中庭に集まってきたのもあって、次々と倒されていった。
赤の女王は皆まだ幼さが残る少年少女ばかりだが、城でふんぞり返っている大人の兵士よりも実戦経験が豊富だ。
身に付けている武具の性能こそ劣っているものの、正面からぶつかれば負けはしない。
中庭にいる敵の数が減ってくると、ガルノルフが仲間たちに向かって声を張り上げた。
「よし、あらかた片付いたな。じゃあ、次の段階に入るぞ!」
中庭を制圧することに成功したグレイシャルたちは、作戦通りにここを
そして、集まった味方の人数を分けて次に作戦に移行する。
一方は城内にいる帝国兵の撃退をし、残りはこの拠点とした中庭を死守するのだと、仲間たちに指示を出した。
当然ガルノルフは、何かあったときのために中庭に残り、作戦通りならばグレイシャルも彼と同じようにここを守るはずだったが――。
「ガルノルフさん! オ、オレ……ッ!」
「言わなくていい。お嬢のとこ行きたいんだろ? さっさと行ってこい。ここまで来たらお前ひとり勝手に動いたって、こっちの作戦に支障ねぇしな」
「ありがとうございます!」
グレイシャルはガルノルフや、その場にいた仲間たちに頭を下げると、中庭から城内へと駆け出した。
それは城内にいる残った敵を
まともな組織や軍隊ならば、けっして許されないだろう行為。
だが個人を尊重する赤の女王では、この程度で処罰されることはない。
たったひとりで作戦など関係なく、グレイシャルはメアリーが向かっているはずの領主の間へひた走る。
「いたぞ! さっさと片付けろ!」
廊下を走るグレイシャルの前に帝国兵が現れた。
現れた帝国兵は3人。
だが魔導兵士であるグレイシャルを、彼ら如きで止められるはずもない。
グレイシャルは突かれた槍を避けながら帝国兵らを殴り倒していく。
中庭から領主の間までは一本道だ。
途中で大広間があり、そこを抜ければ目的地にたどり着く。
もう廊下に敵の姿はなく、グレイシャルはそのまま大広間に到着することに成功したが――。
「こ、これは……ッ!?」
そこにはファリスたち、メアリーと同行していたはずの仲間たちがいた。
しかし彼女たちは甲冑姿の兵の集団に追い詰められており、さらに一緒にいるはずのメアリーの姿はどこにもなかった。
グレイシャルは慌ててファリスたちに加勢し、この状況を訊ねる。
「ファリス! なんなのこいつら!? それとメアリーはどこ!?」
「グレイシャル!? なんでお前がここにいんだよ!?」
会話にならない2人に、全身フルプレート·アーマーの兵士たちが襲いかかってくる。
それからのファリスが言うに、なんでも彼女たちが大広間に入ると、突然、置き物だったフルプレート·アーマーが動き出したようだ。
ファリスは数体を斬り倒したが、動き出したフルプレート·アーマーの中身はからっぽで、どうやら何者かによって魔術で操っていると思われる。
しかも動き出したフルプレート·アーマーらは凄まじく固く、ファリスでもかなり手こずり仲間のほとんどが倒されてしまっていた。
「じゃあメアリーは!? なんで君たちといないんだ!?」
「メア姉は……先に行っちまった……」
さらに絶望的なのは、メアリーがたったひとりで領主の間へと向かったことだ。
彼女はオニキースさえ倒せばこの状況を変えられると考えて強行突破し、傷ついた体で敵の大将を討つと飛び出していってしまった。
メアリーはたしかに強いが、重傷を負っている彼女だけで、槍の使い手として有名なオニキースと戦うのは危険すぎる。
グレイシャルはすぐにでもメアリーを追いかけたかった。
だが、倒れた仲間を
ここはこの動くフルプレート·アーマーの兵をすべて倒してからだと、グレイシャルは拳をグッと握り込む。
「ここはいいから! お前はさっさとメア姉を追え!」
「で、でも……」
「こいつらは多分アダマント製だ。お前とじゃ相性がわりぃだろ。その点あたしの
「だけどファリスッ!」
「それともなんだ? お前はあたしだけじゃこいつら鎧人形に勝てねぇってそう言うのかよ? ナメてんじゃねぞ、グレイシャル。あたしはお前よりもつえーんだ。いいからさっさとメア姉を助けに行けッ!」
ファリスは二刀の片刃の短剣――カトラスを構えて動くフルプレート·アーマーへと向かっていった。
グレイシャルはそんな彼女の背中を見て歯を食いしばると、その場から走り出していく。
そして駆けながら、ファリスに向かって声をかけた。
「ファリス……絶対に死なないでよ!」
「あたしが死ぬかよ、バカッ! お前こそ絶対にメア姉を助けろよ! まあ、メア姉を助け終わったらお前は死んでもいいけどな!」
憎まれ口を叩く獣人の少女の言葉に、グレイシャルは苦笑いをすると全力で領主の間へと向かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます