第8話 西条先生
朝、尾形君が迎えに来ました。
せっかくなので榊原さんに送っていただいた革ジャンを着用。
内側には『式マルダ』と名前が刺繍されていました。
私専用のジャンパーということになります。
なんだか見ず知らずの人なのに素直に嬉しい心遣いに思いました。
XLですが体型にぴったりフィットでラフな感じにはなりません。
しかしながら、この黒いジャンパー内側に特殊な刺繍がされていました。
真言、梵字の厄除け、左右の肩にあ・うんの梵字、背中中央上部には真っ赤な糸で鳥居の形が刺繍されており
尚且つ表面、左胸には金色の糸で意味深な菊の御紋が刺繍されております。
『あ戦闘服か・・・そういうことね・・・』
首のアザが少し消えてきたところで白いシャツにネクタイ、黒のジーンズで決めてみました、あはは。
ほか届いたヘルメットと作業服にも似たような防御策が施されていました。
さて地元の郷土史研究家、
趣味が地元の歴史研究、主に幕末から明治、大正時代がお好きなようで色々と研究されている方でした。
私は尾形君を伴って西条先生の御自宅に、お邪魔いたしました。
「はじめまして式マルダと申します、こちらは私の助手で尾形君です、よろしくお願いいたします」
とりあえず名刺と和菓子の手土産と自腹で寸志と書かれた封筒に3万円ほど入れたものを差し出しました。
「ああ、どうもよろしく」と西条先生は、お土産を見もしないで脇に置くと
「何を、お調べですか」と聞いてきました。
私は正直に
「川沿いの公園と空き地、そこに並びで建っているアパートを解体して土地を浄化するための調査をしています」と述べると
西条先生は目を輝かせて
「おおっ!ようやく、あなた方のような方が、いらっしゃいましたか、それはそれは、ご苦労様です」と言いました。
そこへ先生の奥様が、お茶などを応接間に運んでくださいました。
「おい、お土産もらったぞ、お前からも御礼を」
「まぁご丁寧に、ありがとうございます」奥様は、そういうと、お土産を
「そうですか、あの土地を・・・あそこは人間の悲しい歴史が埋まっておりましてな、
あそこの公園が作られた時、私も少しばかり助言致しまして〇〇寺の当時の住職様とも随分、供養させていただきました」
「え?本当ですか、やはり曰く因縁がある土地なのでしょうか」
私は身を乗り出し伺うと西条先生は背中にある本棚から色々と資料を選んで、ゆっくりと話しだしました。
「あなた方、今日は時間が
「ハイ先生さえ、ご迷惑でなければ私たちは時間無制限です、なっオガタ君!」
「はいっ!先生!お聞かせください、お願いします」尾形君も頭を下げました。
「おーほほほっ、そうですか嬉しいですなぁーこんな日が私にやってくるとは・・・」
先生はコレクションが豊富で当時の新聞記事、
昭和初期のカストリ雑誌、希少な幕末の戦闘記録資料などを
次々に用意して、こう言いました。
「まず・・・今日のお昼、先に出前でも予約致しましょうか」
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