第7話 無理解

 三日ぶりに建設会社、社長と尾形君が無事会社に戻られて早速、

私は尾形君に事務所まで迎えに来てもらいました。

どうも、わがままに思われてしまうのですが私は車の運転が好きではないのです。


 これからは毎朝、尾形君に迎えに来てもらうことにしました。

御札おふだや作業服など会社の車に積み替えて社長と打ち合わせです。


「おはようございます」

尾形君は元気そうでしたが、ただ顔面に、まだ生傷と両目の周りが内出血していて


まるでパンダの顔のようになっていました。


「およ・・・その顔、大丈夫なの?」

尾形君に、いつもの笑顔は無く


「式さんの事、笑ったからばちがあたりました」と言って頭を下げてきました、尾形君に神妙な表情は似合いません。


「いや罰なんかじゃないよ、それだけ油断ならないものを相手にしているってことさ今日から、よろしく頼むよ尾形君」


「ハイ先生」


『先生か・・・嘘でも面白いな、だが確か・・・先生と言われる程の馬鹿でなし・・・確か、そんな皮肉な俳句?短歌?あったなぁ気をつけよう』


「それじゃ最初は西警察署に行ってくれないかな挨拶がてら、お世話になってる刑事さんに新しい名刺と御守り届けたいんだ、

その後コーヒーでも飲んで朝飯食おう、

で会社で君のお父さんと打ち合わせて昼飯食って図書館行って調べ物、で解散」


 図書館での調べ物をしていて尾形君には昔の地図を年代順にコピーしてもらったりデータを入手してもらいます。


地図に関しては市役所の土地管理課に「古い地図もあるはずです」と図書館の職員の方から助言をいただき急遽、市役所に適当に事情を話して御協力頂きました。


市役所では会社に用意して頂いた名刺が効力を発揮しました。


 街の歴史をさかのぼるため図書館の郷土史コーナーを物色していると

地元の郷土史研究家さんが自費で出版されている面白そうな本を発見しました。


連絡先を調べ「お会いしたい」と連絡を入れたところ快諾していただき、明日、伺う算段になりました。


 行ったり来たりで気が付けば、もう5時を過ぎていました。


「今日は終了、明日また頼むよ」

そして事務所に着いて、しばらくするとスマホが鳴りました。


昨日、電話で話した銀行の従業員さんからでした。


聞くと、なんということか夜泣きが収まったのでと旦那さんが勝手に御札や護符を剥がして捨ててしまい、今朝になると家の中の照明器具がみんなダメになって壊れ、

もっと嫌なのが

朝、寝ていた、お子さんの首にスマホ充電に使用する電気コードがぐるぐる巻になっていたのだそうで

夫婦ゲンカになり困っているとの連絡でした。


「はぁ・・・なんで、そうなるんですか、旦那さん幽霊にでも取り憑かれてるんじゃないでしょうね・・・」


「それが・・・こういう事に、まったく無知なんです、うちの人」


「悪いんですけど今日は、もう疲れているので明日の夜とか伺うという事でいいでしょうか?」


「はい・・・あのー大変申し訳ないのですが、あの御札とか又、頂けないでしょうか・・・」


簡単に考えて簡単に言ってくれます。


「はい・・・でも、もう次は無いですよ、それと私は旦那さんに説教したりとかは嫌なんで

貴方から冷静に話してあげてくださいね私から言わせると、もう祟りが始まっているようなものですよ」


「はい申し訳ございません、それと式先生の事務所に今から御札、取りに行かせていただきたいのですがダメでしょうか」


簡単に自分本位むかつく。


「はい良いですよ、これからいらっしゃるのですね?」


「はい、すぐに息子と伺いますので誠に申し訳ございません」


「いえ良いですよ、それと勘違いしないで欲しいのですが私に謝るのじゃなくて神様に、ちゃんと謝らないといけないと思いますよ」


「はい、どうすれば良いでしょうか」


「とりあえず御札を設置して手を合わせて心から詫びるしか無いと思います」


許してもらえるのかな?


いやいや、しかし、なんでこうなるの・・・


何か旦那さん危ないなぁ、もう始まってんじゃないかな


それに今日は違う案件で静華さんは忙しくて連絡できないと言ってたし・・・


ったく、しょうがねぇなぁ・・・

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る