第6話 地面

 まだ見ぬ祭師・榊原静華さんは、どんな方なのか想像しながら

眠りにつくと夢を見ました。


美しい見知らぬ女性が私の事務所に入ってきました。


『まさか幽霊?あっ、静華様か?・・・』

その後の事は秘密です、いや夢ですから夢。



 翌朝、目を覚ましました。


祭師さんは、どうやら好きなビジョンを他人に見せることができるようなので昨日の夢は静華さんが私に見せたビジョンなのかも知れません。


 朝、昨日の仕事の続きをと考えアポを取って例のアパートの所有者である銀行へと向かいました。


支店長さんなどに御挨拶をして、あちこち御札を貼って帰ろうとしましたが色々と怖がっていらっしゃる方もいたので車に護符と希望される方に御守りを渡しました。


 お守りは綺麗な袋に入っており表面には只『御守』とだけ刺繍されていました。

首から下げることも可能なように紐も付いています。


「気が付くたびに護符、御札、御守りには手を合わせて、お願いを、ちゃんとしてください」とだけ、みなさんに説明しました。


精神的なものもあると思うのですが、だるいとか体調不良を訴える従業員さんもいらしゃって真剣な様子でした。


 中でも女性従業員さんの、お子さんが夜中に泣き出して

「こわい、こわい」と繰り返していらっしゃる方などは、ご自宅住所を伺ったので夜にでも、お邪魔することになりました。


静華さんからも連絡が来たのでリモートで見てもらうことにしました。


その時は私の目と耳と鼻が役につのだそうです。


 そして夜、例のお子さんが夜泣きされている従業員さん宅に、お邪魔して早速、事情を聞いて、家の中を見て回っていると静華さんから電話が来ました。


聞くと静華さんには見えているらしく2階寝室に瘴気しょうきが溜まっていて、

その原因が階下の洗濯などを行う場所の地面に昔の井戸の跡があって、

それが原因だと判明いたしました。


「水脈溜まりの影響で未成仏の霊が通りすがりに集まってきている」と

静華さんは言いましたが私は適当な事を家の方に言って、そのまま伝えることはしませんでした。


 とにかく一度、床板をはがして井戸跡のガス抜きを行い、祝詞のりとをあげる儀式が必要なので、

それは後日、行うことになり応急的に護符と御札を効果がありそうなところに設置して家を後にしました。


 結局、お子さんの夜泣きは、あのアパートとは無関係でした。


 二日後、私の携帯に、その銀行従業員さんから、お子さんの夜泣きが収まったと連絡がありました。


「ありがとうございました」と

御礼を言われましたが私は釘を刺すように


「まだ何も終わってないかもしれませんので油断しないでくださいね」

と、お母さんと自分自身に言い聞かせました。

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