第5話 リモート祭師

「あー、我が家が一番っ!」

緊張がほぐれ大きな声で、そう言いながらソファーに寝転がりました。


すると

―コンコン!

とノックの音がしました。


「はーい、どうぞー」寝たまんまでもいいや・・・


誰も入って来る気配がありません。


『ん?』寝ながら入口のドアを見ましたが曇りガラスの向こうには誰も居ません。


『気のせいか』と思っていたらポケットのスマホがバイブしました。

表示はでした。


「ハイ、シキです」


「お疲れ様です、榊原静華さかきばらしずかです」


「あぁっ!どうもです、ご挨拶したかったんですが電話番号わからなかったものですから失礼いたしましてぇー」


「寝転がったままで、いいので聞いてください」


『えっ!なになに!わかんの?』


「最初に言っておきます実は、ここ一ヶ月ほど式さんを、ずっと監視させていただいておりました大変な毎日ご苦労様です」


私は起き上がりました・・・


「ハイ・・・」


「無断で監視など致しまして申し訳ございません、しかしながら私も不本意でして私の父が、どうしてもという事でして、お許し下さい」


「ハイ・・・」


「監視と申しましても遠隔透視という形でして隠しカメラなどがあるわけではございません」


「ハァ・・・」


「リモートビューイングというやつです、それと先ほどのノック音は私の遠隔念動力ですリモートサイコキネシスと言います」


「ハ、ハイ・・・」


すると

『コンコン』とまたノック音がした、テーブルから・・・


「それと今回の報酬につきまして不満はございませんでしょうか」


「いいえ、まったく大いにありがたいと思っています」


「今回の祭事まつりごとが終わりましたら、さらにお支払いいたしますので張り切って働いてくださいね」


「ハイ」


「それから式さん物書きだそうですが・・・」


「あハイ大丈夫です今回のアパートに関わる一切、封印していますので書きません」


「そうですか書けるものなら別に書いてもかまいませんよ、ただし今までも私の祭事、書いた方いましたが、みんなボツだったようです」


「はぁ書いても・・・ボツって何かあったんですか」


「さぁ、あんまり現実離れしている事が多いのでボツになったんじゃないでしょうか、あとたたりで出版社がNG出してきたとか、そんなとこだと思いますが」


「はぁ、なるほど」『じゃやっぱり書けないジャン』


「それと差し出がましいのですが、お金は無駄使いしないで欲しいのです」


「はぁそれは大丈夫ですが何か制限があるのでしょうか」


「いいえ、ありません、ただ変な投資に使ったりギャンブルやキャバクラなどで散財しないで欲しいのです」


「それは・・・ないですね監視されてたのなら、お分かりかと思いますがギャンブルもキャバクラも無縁です、ただ・・・」


「ただ?・・・」


「ハイ、数千円のクラブ通いや欲しかったプラモデルくらいは使ってもよいでしょうか?」


「あなたのお金ですから・・・何に使ってもかまいませんよ、ただ散財だけはやめてほしいのです、これでも余っている、お金を報酬にさせて頂いた訳ではありませんので、それなり私も労力をついやしていますので・・・」


「あ、もしかして、おごったりとかそういう・・・」


「そうですね、すぐ気が大きくなるというか貴方は宵越よいごしの金を持っていられない性格で自分に必要な人間を自ら遠ざけて逆に足を引っ張ってくるような人間を選んで、そばに置く性質があります」


「なるほど、そうかもしれません・・・」


「それと仕事に集中してもらいたいのですが一つ気がかりがありまして・・・」


「はぁなんでしょうか」


「アサミさんです、あなたのプラスになる方ですよ、お付き合いしないのですか?」


私は心底、驚いていました・・・


「あーなんでも、ご存知ですね彼女は良い方ですが私は彼女を幸せにする自信がないんです、

結婚を考えたり子供を作ったりとか考えられませんし・・・

正直、惜しいのですが例の尾形君にでも預けようかと企んでいるんです彼なら安心ですし」


「わかりました、それでは明日から彼女は貴方に、そっけなくなりますが、よろしいのですね」


「え?榊原さんが何かされるんですか?」


「はい、式さんが汚いおじいさんになって尚且なおかつ尻や胸を触りに来るという未来の作ったビジョンを夢として彼女に見せます・・・」


「うわ、なんかヤダナーそれ」『リアルーっ!』


「でっぷりと腹が出た、おじいさんがトドのように汚いお尻を出して彼女に乗っかります」


「えーっ?」『最悪・・・落ちますぅ・・・』


「ではトド作戦よろしいですね」


「あの榊原さん・・・なんか面白がってますよね」『なんかムカつく』


「はい面白いです、こういうお節介、嫌いじゃないです、あははっ」


「そうですか・・・・」『どういうつもりだよ・・・』


「仕事に集中していただきたいのです命が掛かっていますので」


「はい、そうですね」

そうでした・・・


「そのかわり、いつでも私が見守っていますのでよろしく、それでは今晩またお逢いしましょう、明日から忙しくなりますよ」


―プツ・・・電話が切れました。


今晩?こんばんってなんだっけ?・・・わたしが?・・・

あ、電話番号聞くの忘れた・・・・・


―コンコンと又テーブルが鳴りました。


うわ、こっちの考えてること解るんだな・・・


『忙しくなりますよ』・・・どっかで聞いたフレーズだな・・・


あーっ、母が死んだ日の神社の、あの電話・・・・


あれぇー?・・・Nの救命の時の消防の係、あの119の人・・・・


静華さんだったのかな・・・・まさかなぁ・・・・


―コンコン


 すごいな・・・静華さんで、こんなにすごいなら


城一郎さんて、お父さん・・・どれだけすごいのかな・・・


これも・・聞かれてんのかな・・・見られてんのかな・・・


周囲を見回したところでカメラがあるわけでも無し・・・


私は立ち上がりました独りぼっちの事務所で・・・


「萌えーっ萌えーっ!もえもえっ!キュンキュン!

マルダァ感激ですぅー!ニャン、にゃ・・・」


―バンッ 突然、事務所の電源・漏電ブレイカーが落ちますた・・・


うっわーめっちゃ怖いんですけど・・・・事務所、真っ暗・・・


すると

―ブーンブーンとテーブルに置いたスマホがバイブりました。


表示は非通知・・・多分、静華さんだ・・・ふざけたから

怒られるな・・・怒られるんだ・・・きっと・・・

ブレイカー落ちたし・・・


「はい・・もし、もしもし」


「も、萌えーっ萌えーっ!萌え萌えキュンキュン、シズカァ感激ー!

ニャン、ニャン!!ブツリ  ツーツーツー」


あ、そうなんだ・・・・冗談は一応、通じるのね・・・

良かった・・・

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