第9話 件のアパート

 ある日、武藤刑事が私の事務所にやってきました。


武藤さんは少し、お疲れの様子で昼時だったので出前を頼みました。

近所に出前をしてくれる、お店がないので離れた、お蕎麦屋さんにお願いしました。


その、お蕎麦屋さんは少し遠いので嫌がられるのですが、たくさん頼むと出前OKになります。

冷やしたぬき二つとカツ丼一つカレーライス一つを注文して武藤さんと二人で食べました。


そして「」と言われながら(*´∀`*)

あのアパートであった過去の事件の詳しい内容を聞きました。


古い順から時系列に沿って説明致したいと思います。


 数十年前、最初の大家さんは勤め人で、その退職金で川沿いの安い土地を買い、あのアパートを立てました。


当初のアパート家賃は四万円だったそうで立地が良いとは言え当時は、そこそこの物件でした。


 各部屋は、すべて契約されて順調な滑り出しに思えましたが一ヶ月持たずに入居者みんなで相談したかのように出て行きました。


残った入居者は101号室の人のみだったそうです。


 アパートの裏側には川が流れていて季節は夏、みなさん裏側の窓を網戸だけにして寝ていると夜中、金縛りになり窓の外に『生首が現れる』と騒ぎ出したのです。


管理していた不動産屋さんは、権利金・敷金・前家賃・仲介料と徴収していたのですが

「お化け屋敷を紹介して金返せ」と揉めて、

おまけに

「引越し代が馬鹿にならないので弁償しろ」と

さらに揉めに揉めて裁判所で調停の場が設けられて不動産屋さんも大家さんも大損害になりました。


 決め手になったのは元・住人たちの証言と何枚か撮れた『心霊写真』だったそうで

意地になった借主たちが毎日、毎夜、交代でアパートの写真を撮りまくったのだそうです。


 そのあと残っていた101号室の入居者が家賃を滞納して督促にも応じず、不動産屋さんと大家さんが取立てに行くと

部屋の奥に居たであろう入居者が刃物で襲い掛かり

不動産屋さんと大家さんは、お二人共亡くなりました。


犯人の101号室住人は、その場で自害しました。


「マジすか・・・」


「うん」


 現場は3人の血が広がりあふれ血の池が出来ていたのだそうです。


 その後、大家さんの家族は、この物件を売りに出しましたが、なかなか売れず、ものすごい安値で今の不動産屋さんが購入されたといいます。


細かい経緯いきさつまでは武藤刑事は知らないらしいのですが事件に関しては、まだ続きがありました。


 建物は解体されることもなく不動産会社の税金対策か、このアパートの部屋は安く貸し出されました。


何年も売れず何年も入居者が居なかったようですが立地が好条件でわりと最近、家賃を、ぐっと下げたところ二階の106号室と一階の103号室が入居しました。


 ところが、やはりといいますか・・・入居まもなく103号室の方が首をつって亡くなってしまい空き室になりました、お亡くなりになった理由は今も不明。


そのあとに、この物語冒頭の行方不明になったAさんが102号室に入居されたのです。


 Aさんが行方不明になったあとの事は何も知らなかったのですが

実は二階の106号室の部屋で借主の男性と、お付き合いしていた女性が居たらしいのですが

アパートには男性、女性とも居住しておらず聞けば、おふたりは不倫関係でラブホテルがわりに昼となく夜となく利用されていたらしいのです。


そしてAさんが行方不明になったあと二階の106号室で女性の首吊り死体が発見されてしまったのです。


 時、同じ頃この不動産屋さんは土地の売買で、なりすまし詐欺被害にあってしまい多額の負債を出し、

この物語冒頭のOさんやBさんが話し合いをした店長さんが実は、この不動産会社の経営者でアパートの二代目大家さんでした。


 やがて二代目大家の社長さんも、なぜかこのアパートに来て外階段の手すりを利用して首を吊っていました。


早朝の散歩をしていた歩行者が死体を発見して警察に通報してきたのだそうです。


 負債のあった社長さんの所有していた、このアパートは差し押さえ物件となり債権者間で話し合いの上、現在の土地・建物の所有者は――銀行なんだそうです。


 その後、何にも知らない先日のNさんが夜間に撮影に行き事故りましたが騒ぎになるのを嫌がった銀行がNさん相手に被害届等を出さなかったと云う事でした。


Nさんが不起訴になった理由が何となく解った気がしました。


あの黄色いテープは先の首吊り事故のものだったのです。


話が終わったとき武藤刑事は私にと

「鬼子母尊神・身代わり御守り」

と書かれた、小さなお守り袋をくださいました。


警察署内で、おかしな事があるときに供養などを願いしている、お寺のありがたい、お守りだと聞きました。


そして、あの映像データにも残っていた『お経』は生者を黄泉よみの国にいざなうものだと住職様が言っていたそうなのです。


あのアパートは私が想像していたより多くの方が亡くなっていた物件で

私が呪われたのも解る気がします。


 そして私は、もう二度とあのアパートには近づくまいと決心していたのに、これで終わった訳ではなかったのです。


気持ちとは裏腹にアパートの立つ前は、あの土地に何があったのか


なぜ周囲は何十年もの間、空き地や公園になっているのか


そして、この不気味な幽霊たちと現象、不幸の連鎖は一体何なのか


知っていく事に、なるのです。

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