第8話 帰郷

 Nさんは一ヶ月入院し治療を受けました。


退院されたとき私の事務所にNさんと御両親が挨拶に、いらっしゃいました。


Nさんは少し障害が残ってしまい松葉杖を1本だけ突いていました。


 警察では不起訴処分になりました。

アパートのオーナー様が訴えなかったそうです。


危うく前科が付くところ不起訴になり救命活動した私の事を本人と御両親が警察からということでした。


それを聞いたとき私は警察の武藤さんや小林さん鈴木さんの顔を思い出しました。


Nさんは不法侵入しています。

カメラは押収されたままで戻りません、Nさんは当夜の記憶が曖昧になっているらしく部屋に入ってからのことなど、ほとんど覚えていませんでした。


私は例の押収された映像の事をしゃべりませんでした。


Nさんはリハビリを根気よくすれば回復の見込みが、あるのだそうです。


Nさんの故郷は秋田県で、お父様が農業関係の、お仕事をされており

その伝手つてでNさんは帰郷してアルバイトをしながらリハビリに専念するのだと話していました。


御両親は大変丁寧に御礼を述べられて、お土産に秋田の駅で買ったという冷蔵・真空パックのキリタンポ鍋セットを私に持ってきてくださいました。


それを見たとき、なぜか・・・急に胸が熱くなり涙が溢れてきて涙ぐみながら私も御礼を言いました。


 Nさんは終始、笑顔でした。


皆さんが、お帰りになったあと、お土産のキリタンポ鍋セットの箱を開けたところ


ビニール袋に入った封筒が出てきました。


中にはNさんの、お父様が書いたであろう手紙と現金が入っていました。


手紙には丁寧な、お礼の言葉と

「機会がありましたら一度、秋田にいらっしゃってください」と書かれていました・・・

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