第31話 ◇五蓋共鳴
第五鬼門で狩り始めてから一か月の時が過ぎた。その間に、討伐した五蓋鬼の数は合計で1500ほどだった。
現在の討伐数は条件に必要な数の一割すら終えていない。この討伐ペースでいくと条件を達成するのに一年半近くの時間が掛かってしまう。
そんな不安が第五鬼門で狩りを始めたばかりの頃にはあったが、今は二つの変化によって解消された。
それは狩りの頻度と第五能力だ。
狩りの頻度が増えたのは、父さんから第五鬼門までなら単独で狩りをすることが許されたから。
第五能力の方は、五蓋鬼の共鳴吸収数が増えたことで能力について理解できた。その中で一番注目すべき点は、第五能力がこれまでとは違ってリスクを伴う力だったこと。
精神への影響。
その事を考慮しながら能力を上手く使っていく必要あるが、それさえ気をつけていれば文句なしに強力な能力だといえる。
そんな今回の能力を最大限に活かすには、力の源となる五蓋鬼の共鳴吸収数を上げる事が最重要だ。だからこそ、俺は五蓋鬼の討伐数を偏らせることにした。
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『進段状況』
〈討伐〉
・欲鬼 (7 / 5000)
・怒鬼 (253 / 5000)
・怠鬼 (138 / 5000)
・乱鬼 (1099 / 5000)
・疑鬼 (9 / 5000)
〈吸収素材〉
・黒鉄『吸収率100%』
〈熟練度〉
・剣技(800 / 800)
――――――――――――――――――――
今は狩りの効率を考えて五蓋鬼で狩るのは欲鬼と疑鬼を除いた三鬼に絞っている。
狩らない二鬼については後でまとめて討伐すればいいだろう、と思っている。
そういった考えに至ったのは五蓋の共鳴で得られる力の違いからだった。
これらの力はそれぞれの五蓋鬼が持つ。
能力の特徴と同じもの。
その中で俺が最も重要視したのは素早さの力だった。だから、他の五蓋鬼と比べて乱鬼の討伐数だけが突出して多くなった。
素早さの力を優先した理由。
それは単純に討伐条件を早く達成する為に、守りよりも攻めの力が欲しかった。
そうなると、選択肢は自ずと素早さの乱か攻撃力の怒となった。
あとは狩りやすいという理由で乱鬼の討伐を優先させることにした。
という事で今日も乱鬼狩りをしている。
「ウカぁァーー」
「これで1100匹目だな、キリ番だから全力でいかせてもらうぜ。《
俺は討伐数のキリが良い時に能力の確認をする為に全力を出す。
その全力というのは、五蓋共鳴にある四つの段階をすべて使用することだ。
乱纏。
死鬼霊剣から乱の力を引き出し、体を覆うように纏わせること。
乱感。
体に纏わせた乱の煩悩に共感を抱く。
乱鳴。
自分の感情と乱の煩悩を共鳴させる。
乱憑。
共鳴を越え、乱の煩悩と一つになる。
煩悩の浸食率によって変化する。
煩悩纏い――1~25%
煩悩共感――26~50%
煩悩共鳴――51~75%
煩悩憑依――76~100%
煩悩纏いは自身の感情に煩悩を受け入れるほどに浸食率が上がり共感、共鳴、憑依の順により強力な力が得られるようになる。
その対価として、煩悩の浸食率が上がるほどに精神力も大きく削られていく。
今はまだ吸収した共鳴数が少なく煩悩憑依まで使ったところで大きな負担はない。
だが、いずれは吸収した共鳴数が増えていきどこかのタイミングで煩悩憑依を気軽に使うことは出来なくなるだろう。
その根拠としては、五蓋道にあった煩悩を放つ玉と比較すると現在の共鳴数は強いとは言えないからだ。
五蓋道にあった玉を五蓋共鳴の基準に当てはめて考えると、5万相当の煩悩が込められている。現在の最大共鳴数である乱の約50倍もの煩悩があの玉には込められていた。
俺が同じ力を手に入れるには、五蓋鬼一種を5万討伐すれば得られるが……そこまで狩る気力が果たしてあるだろうか。
どこまで五蓋鬼狩りをするかは別として、俺が現状で把握できる事については整理して今後の方針を立てるべきだ。
まず五蓋共鳴には、五蓋鬼と同じ5つの能力があり煩悩の浸食率によって憑鳴感纏の四段階に別れている。
この能力の強みは戦況に合わせて能動的に使える手札が20通りも得られること。その対価としては、煩悩の浸食率に比例して精神力が削れていく。
ゲームで例えるなら、精神力を消費することで使用可能なアクティブスキルだ。
上手く使えれば強いが、ペース配分を間違えて使い過ぎると敗戦へと繋がる危険性もあわせ持つ。
その事を考えた上で。
俺がすべき事は二つだろう。
五蓋共鳴への慣れ。
精神力強化。
一つ目の五蓋共鳴への慣れは五蓋鬼を狩る過程で能力を使用していけばいいだろう、と考えている。
問題は最後の精神力強化だ。
能力使用により煩悩の浸食で削れる精神力は鍛える必要がある。けど、その最適な方法がわからない。
とりあえず、当面の間は朝晩に瞑想する時間を作ってみて、それで精神力が鍛えられるか試してみようかと考えている。
そんな感じで。
今日も討伐条件の達成を目指して五蓋鬼の狩りを続けていくのだった。
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