第2話 2日目 オルレアンへ
トラベル小説
8時に朝食をとり、空港内のBレンタカーのオフィスに向かった。レンタルしたクルマはフランス車のプジョーである。30数年前に405を運転したことがあるが、足回りのいいクルマという印象がある。運転席に座ると、ちょっとした違和感がある。なにかと思うとナビがない。
「ナビがないクルマですか?」
「大丈夫ですよ。わたしのタブレットでナビゲーションします」
さすが長谷川さんと思わされた。用意周到だ。今回の旅は完全に彼女のペースだ。
走り出すと、乗り心地がいい。ベンツよりは音が大きいと思うが、いいエンジン音だ。しなやかなコーナリングはさすが猫足と言われるプジョーだと思わされる。そしてこのクルマの最大のメリットは、高速道路の料金所でtのゲートが使えるということである。tとはフランス版ETCのことである。最初にゲートを通る時は本当に通れるかどうかドキドキしたが、すんなり通れたので安心した。これが使えると、相当の時間短縮になる。以前、木村くんと南フランスを旅した時は、料金所のたびに停止し、クレジットカードで支払いをしなければならない。日本のように入り口と出口だけでなく、途中に料金所がある。後で調べたら無料区間と有料区間があって、料金所がそのたびにあるのだそうだ。どこも数百円単位なので、あとできたクレジットカードの請求明細書を見て笑ってしまった。長谷川さんの説明では、高速道路の料金は後払いだそうだ。Bレンタカーはフランスに強い会社なので、そういうサービスができるということだ。さすがCAさんの情報網はすごい。
高速道路を東に向かう。めざすはドン・レミ村である。ジャンヌ・ダルクの生誕地である。シャンパーニュ地方にある人口200人足らずの小さな村というか田舎である。休憩も含めて、4時間かかった。昼時だったが、何もない。ジャンヌ・ダルクの生家跡やお告げを受けたという教会があったが、博物館になっており、時間がかかりそうなので、中に入るのはやめた。
少し小高いところで、長谷川さんは大きく息をすった。
「これがジャンヌが吸った空気なのね。私もここからスタートだわ」
「何をスタートするんですか?」
「それはまだ秘密。あとでお知らせします」
また高速道路でオルレアンをめざす。
「4時間ぐらいでつくんじゃないですか?」
と長谷川さんは苦も無く言う。運転は私一人だというのに・・・高速道路なのでナビはたまにしか指示がでない。時々、うたた寝をしている時もあるので、
「ゴホン!」
とせきをすると、パッと目をあける。その仕草がおもしろい。
7時にオルレアンに着いた。郊外にあるHインに予約をとっているということだが、お腹がペコペコなので、すぐに食事をしたかった。それでファストフードのメッカ、ハンバーガーのMにとびこんだ。日本よりでかいビッグバーガーにびっくりしながら、お腹に供給したという感じだ。
今日の走行距離600km。渋滞がないのが救いだった。
「明日からは距離は短くなるから」
という長谷川さんの声は頭の上を通り過ぎていた。時差ボケがまだ残っているところで、ベッドに入ったら即オヤスミだった。
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