第27話.パターン1:時系列にプロット通りに進める。
満月の青白い光が辺りを照らす。
貴族の豪邸が多く立ち並ぶこの区画の中でも比較的大きな館。その屋根の上に一人の男の姿があった。
短めの青みがかったグレーの髪に、
男性にしては少し小柄な160センチほどの身長。
整った顔に、鋭い目。黒の上下に身を包んでいるこの男は名をルイス・ナバーロと言った。
ルイスは屋根の上にある明り取りの窓へと取り付いく。
そして、小さな鏡を使って明り取りの窓から部屋の中を観察する。
ダンスパーティ用の部屋だろうか? 隅のほうに白いテーブルクロスがかけられた丸いテーブルがいくつか並んでいるだけで、部屋の中央を含めたかなりの範囲は、何も置かれていない広いスペースとなっていた。
モザイク模様の床が広がるその部屋の中央付近には5人ほどの男女が立ったまま、何か話しているように見える。
さらに、部屋の出入り口を中心に部屋を一周するように、赤を基調として騎士服と鎧に身を包み、片手直剣で武装している十数人の騎士たちが直立不動の状態で立っている。
全員が真剣な目つきで周囲に気を配っている。
こんな夜遅くにずいぶんと物々しい警備だが、それには訳があった。
その理由は、今朝早くにこの屋敷一通の予告状が届けられたからだ。
予告状を届けたのは、今も明り取りの窓から中の様子を伺っている怪盗ナバーロこと、ルイス・ナバーロなのだが。予告状の内容はこうだ。
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予告状
今夜、月が中天にかかる頃。
パナケアの薬箱を頂きに参上する。
―― 怪盗ナバーロ
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予告状にあるパナケアの薬箱というのは、神秘の霊薬という貴重な薬を作る道具だ。
その霊薬は、どんな病気や
少し前の冒険で、もう一人のナバーロ。ルイスの弟のティトが大怪我を負った時、二人は有効な回復手段をもたなかった。
その時は運よく助かったが、毎回そんな幸運に見舞われることはない。
そんなわけで、良質な回復手段を求めた結果、ルイスが辿り着いたのが『パナケアの薬箱』の噂だ。
そして辿り着いたのが、ここメルゼベルク伯爵家だった。
パナケアの薬箱の持ち主は、イザベラ・メルゼベルク。ちょうど、ルイスの真下にいる赤髪の女性だ。
咲き誇る薔薇のような綺麗な赤い髪。
切れ長の目は、少しだけ冷たい印象を与えるが髪の色に似たルベライトの瞳は、宝石の様に輝いている。その瞳に、長く形の良い
張りと潤いのある肌。そして、ぷっくりとした厚みのある唇には、髪を同じように薔薇を思い起こさせる紅に、リップグロスのツヤと光沢により
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🔹この辺りで1200文字
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そのイザベラの左右には、それぞれ一人ずつ男が
右側には、周囲の騎士たちと同じように赤を基調として騎士服と鎧に身を包む
背中には他の騎士たちよりも一回り大きい片手直剣を背負っている。
口を真一文字に結び、イザベラを守るように立っている。
ルイスの事前調査によれば、彼はイザベラ直属の騎士団である
左側には、黒の執事服を着た中年の男性が立ち、その左手には細長い鎖を握っている。
鎖は、その男の目の前に打ちひしがれている狐耳の少女の首に繋がっている。右手には、短い鞭のようなものが握られていて、今まさにその少女を打ち据えようとしているところだった。
「酷いことしやがる……」
ルイスは唇を噛んでその光景を見据えていた。
飛び出していきたいところを必死に抑える。今、行ったところでバルドゥルと十数人の騎士たちに囲まれてしまうだろう。
武術にも自信があるルイスだが、さすがに数が多過ぎた。
もう少し中の様子を探るため、ルイスは集音用の魔法道具を取りだす。
それは、長さ50センチほどの細いロープのようなもので、その両端にそれぞれ変わった形の何かが取り付けられている。
いっぽうの端は、直径4センチほどの吸盤のような平たい構造をしていて、ルイスはそれを明り取りの窓に張り付けた。
そして、もういっぽうの端にある耳栓のような構造のものを自分の耳に突っ込む。
途端に中の音が聞こえるようになる。
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🔹この辺りで1900文字
下書きだと、ここまで1300文字なので、
やっぱり5割くらい増えちゃってますね
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「おい、娘。そろそろ時間だ。儀式の準備をしろ!」
「嫌よ。誰があんたたちなんかに!」
鎖の端を持つ黒い執事服の男。おそらくこいつはイザベラ専属の執事、トビアスだろう。バルドゥルとは対象的な細身の体で、嗜虐的な目を少女に向けている。
そのトビアスの言いつけに反抗的な態度を見せる狐耳の少女。
その態度が気に入らなかったのだろう。
「何だと!? 貴様、自分の立場が分かっているのか? 拒否できる立場じゃないんだよ!」
「きゃあっ」
トビアスは怒気をあらわにすると、少女に怒鳴りつけ鞭を振った。
ビシッという音と少女の悲鳴がルイスの耳をついた。
「くそっ」
ルイスはギリッと音がするほど歯を食いしばった。
だが、トビアスの鞭は止まらない。
「何をぼさっとしてやがる。さっさと準備するんだ」
立て続けに、鞭の音が響き、そのたびに少女は背中を大きく仰け反らせた。少女の背中には、赤い血が滲んでいる。
「分かった……。分かったから、お願い。叩かないで」
少女はよろよろと立ち上がる。
背中の傷が痛むのだろう。少女は目をしかめ口元を歪めた。
「フォルクス、あれを渡しなさい」
黒いフード付きローブの老人に向かって声をかける。
老人のように見えるが、本当のところは分からなかった。室内だと言うのに、フードを目深に被っているため、ルイスの位置からは、その顔を窺い知ることは出来ない。
フォルクスと呼ばれた、黒ローブは一本の杖のようなもの取り出すと、それを持って少女に歩み寄った。
その杖のようなものは、小柄な少女の身長と同じくらいの長さで、
上部には、青く透明な水晶が称えられ、それを囲むように三重の輪が取り付けられていた。
それは、まるで湖面に水滴が落ちて波紋が広がるようにも見える。
そして、水晶のすぐ下には、小さなガラス瓶のようなものがついていた。
さらに、下の部分は不規則な凹凸がついていて不思議な形をしている。それは、とても大きな鍵のようにも見えた。
少女は杖を受け取る。
「ねえ、これを付けたままじゃ舞えないわよ」
少女が首につけられた鎖を指しながらトビアスに訴えると、トビアスは目を吊り上げて鞭を振り上げる。
少女は小さな悲鳴をあげて体をすくめた。
「トビアス、外してあげなさい」
「はいぃ! かしこまりました」
イザベラが静かに言うと、トビアスはすぐに返事をして慌てて鍵を取りだすと、少女につけてあった首輪を外す。
少女は首を痛かったのか首をさすっている。
「失礼ですが、イザベラ様。そろそろ怪盗ナバーロの予告時間になります。本当によろしいのですか?」
それまで黙っていたバルドゥルが、控えめに口を開いた。
「ええ。さっき、フォルクスが言ったように、儀式は満月の夜12時前後が一番効果があるらしいの。だから、ここで辞めるわけにはいかないわ。怪盗ナバーロのことはバルドゥル、あなたに任せます。頼りにしてるわよ」
「……は、はい! 身命に変えてもパナケアの薬箱は渡しません」
イザベラは、バルドゥルに一歩近づくとその手を取って、彼の目を見つめながら、そうお願いする。
イザベラはバルドゥルに比べてかなり背が低い。
ちょうど上目遣いで見上げる形になるその表情は、懇願しているようでもあり、普段の美しさとは別の可愛らしさが加わって、バルドゥルはしばらくイザベラの顔に見惚れてしまう。
数秒の沈黙のあと、バルドゥルは耳を真っ赤にして慌てて返事をした。
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🔹この辺りで3400文字
状況説明と登場人物の説明がとてもしやすいです。
既にファンがいるような作家さんや物語の続編だと
これでも良い気がしますね。流れも素直だし。
ただ、新規さんに続きを読んでもらえるような魅力
は出ていないと思います。
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