八、赫奕たる天空の彼方へ 1
空虚な気持ちだけがそこに残った。
アステリスは縁によりかかってしばらく太陽の方角を見つめていたが、やがてそこからも目を離すと、手を頭へやって呟いた。
「あーあ」
と。
「疲れたよ」
そしてもう一度縁に寄り掛かり両手で顔を支えると、美しい雲の海、風が強いのにも関わらず、悠々と流れる雲と青い青い空を見つめ、ふう、とため息をつくとジラルダの方に向き直った。
「そういえばよもよもを置いてきちゃったんだよね」
「――――― なんだね?」
ジラルダは意味不可解な言葉に己れの耳を疑って聞き返した。
「よもよも。ほら、あの遺跡の入り口に置きっぱなしだあ……」
「―――――」
ジラルダはたっぷり三秒凍って思考をまとめ上げ、そしてやっとのことで言った。
「――――― 君はあの鳥駱駝に名前をつけているのかね」
「なによ悪い?」
アステリスはフン、と鼻を鳴らして口をとがらせた。吹き出し声もなく肩を震わせて笑うジラルダを睨んでいるのだ。
そしてひとしきりして、ジラルダは自分も空に目を馳せながら静かに言った。
「さあ帰ろうか ―――――地上人が帰るべき地上へ ―――――」
フェクタがうなづきアステリスがうなづいた。
三人は連れ立って船室へと入り、舟はしばらくそのままそこに停止していたが、やがてまた低い唸り声を上げると、金属の羽根をはばたかせ静かに動き始めた。
アラサナの血を持ちながら既に地上人の寿命を迎え成長しないまま生きていくフェクタと ―――――竜牙剣を携え戦場を駆け抜けるアステリス ―――――そして歴史が誇る知識と天才的な剣士ジラルダを乗せた異形の舟は、七日のちに地上へと降りたった。
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