第9話 学年が上がりました、何故か同じクラスになりました


「いやー、今年もお前と同じクラスとはな。これで2年連続だ。なにか、運命的なものを感じざるを得ないな、これは」


 3年生として初めての学校にてクラス発表を受けた俺が、書かれていた教室へと向かっていると涼が後ろからそんな風に声をかけてくる。どうやら俺と涼は今年も一緒らしい。


「いや、単純に理系クラス3個しかないんだから2年連続くらい割とあるだろ」

「相変わらずのドライぶりっ。...というか、今年は桐山さんも同じクラスだったよな。どこにいるんだ? 絶対にお前と一緒にいるとばかり思っていたんだが...んっ? というか、お前は一体なにを抱えているんだ?」


 すると、涼が後ろから不思議そうにそんなことを尋ねてきた。


「いや、ひよりならちゃんとここにいるが?」


 そしてそんな涼に対し俺は振り返って両手に抱えたひよりを見せる。


「いや、なんか当たり前みたいな雰囲気出してるけど大分無理あるからな!? 付き合ってるんだよな? 流石にもう付き合ってるんだよな? その上でその距離感なんだよな? な? というか、付き合ってるとしてもどうしたらそんな状況になるんだ?」


 しかし、涼は何故か納得いかなかったようでそんなことを言ってくる。


「いや、単純にひよりがクラス発表見て喜びすぎて体力使い切って眠っちゃったから運んでるだけだぞ? 今も変わらず普通に幼馴染だ」

「ダウトだ、ダウト。普通の幼馴染はそんなことしませんっ。ソースは俺!」

「お前の場合声でかすぎて近寄りにくいんじゃね?」

「いや、そういう問題じゃねぇからっ、いい加減にしないとそろそろ手出るよ!? 首や脇を刺激しちゃうよ!?」

「手が出るってこちょこちょかよ。なんで、毎度お前の脅しは地味なんだ」

「うみゅっ。...ふあぁ〜。..........んっ」


 俺と涼が歩きながらそんなやり取りをしていると、腕の中でぐっすり眠っていたひよりが目を開けて背伸びをした。


「...おはよう、翔太」

「うん。まぁ、二度目なんだけどな。おはよう、ひより。どうだ、下りて歩けそうか?」

「うん。でも、どうせならこのまま教室まで運んでいって欲しい」

「お前なぁ...今日だけだからな?」

「分かってる」


 瞼を擦りながら本日2度目の挨拶を交わしてきたひよりに俺がそう尋ねると、そんな風に返されてしまったので仕方なく俺はそう言うのだった。...まぁ、どうせあと少しだからな今下ろしたところでではあるしな。


「普通の幼馴染なんて絶対嘘だ。嘘でなくちゃいけないはずなんだ。もしこれがまかり通る世界なら間違っているのは世界のはずなんだ。俺は間違ってないんだ。絶対に幼馴染なんて有り得な——」


 しかし、何故か後ろでは涼が目から血を流しながらブツブツと呟いているのだった。こいつは一体どうしたというのだろうか?



 *



 さて、ここで一度俺の今の状況を整理してみようと思う。俺はひよりに俺以外との関係を築いて欲しくて昨年はなんとか嫌われようとしていた。そしてその結果...悉く失敗した。しかも、その上今年は同じクラスだ。これでは昨年以上にひよりと関わらないようにするのは厳しい...というわけではないと俺は考えている。

 というのも、同じクラスで授業を受けるということは昨年とは違った嫌われ作戦を取ることが出来るのではないかと考えているのだ。

 それにどうせ昨年の様子を見るにクラスが別れたところで、他の人間関係なんて築こうとしないからな。だったら、俺の目に見える範囲にいてくれた方がまだ上手く誘導して関わらせる機会を作れそうだ。なので、同じクラスなのはそこまで悪くはないのでは、と俺は思うのだ。


 というわけで、3年生初日早速俺はとある作戦を決行した。


「何故だ、何故なんだ」

「大丈夫、翔太?」


 そしてなんともまぁあっさりと失敗していた。そして横ではひよりが心配そうに俺の顔を覗き込んでいた。おかしい。本当にこんなはずでは...というのも、今回の作戦はいつものようなひよりに嫌われる為のものではなかった。

 今回のは作戦は別視点。半ば無理矢理ひよりに他の人との関係を持たせようというものである。

 作戦としては単純明確なもので新しいクラスで俺が友人を作ろうと、色々な人に積極的に声をかけて回る。すると、当然ひよりは俺についてくるので必然的にひよりも他の人と関わる機会が生まれるといったものである。

 なので、今回の作戦には俺はかなりの自信を持っていたのだが...何故か最初の段階である声をかけるというところから既に挫折していた。

 いや、おかしよな。これっ。なんで、俺が声をかけようとするとみんなして避けるんだ!? 俺がなんかしたのか!? もしかして、俺が臭いとかか? いや、でも今までそんなこと言われたことないし、なんなら顔見知った奴もいるんだが...何故か全力で避けられてしまっていた。



「一体なんでここまで避けられるんだ。意味が分からない」

「なんか、よく分からないけど翔太可哀想。膝枕いる?」

「いや、いい。というか、この体勢でどうやってやるつもりなんだ」


 いつの間にやら俺の膝の上に体を乗せて置きながらそんなことを言うにひよりに対し俺はそう返す。はぁ、本当に今回のは自信あったんたけどな。


「いや、桐山さんの「何人たりとも私の翔太に近寄るな」的な圧のせいなんじゃ——い、いえ、なんでもないです。すいません。余計なこともう言わないので俺をそんな目で見てくるのはやめてください」

「うん? 涼なんか言ったか?」

「いや、ナニモナイヨ。じゃ、じゃあな!」

「お、おいっ」


 そして唯一俺の近くに残っていた涼までもがなにかに怯えるように、自分の席へと走り去ってしまうのだった。

 まぁ、そんなわけで三年生初日の作戦は見事失敗に終わるのだった。や、やっぱり、俺がひよりに嫌われるような作戦じゃないと無理があるということか?


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 次回「お化け屋敷でビビって幻滅させてみた」



 お久ぶりです。テスト週間とぷよぷよはまりのダブルで更新遅れました。すいません。まぁ、まだテスト週間なんで次もしばらく空くかもですけどご了承くださると嬉しいです。

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