第5話 私以外の女の子にアピールしちゃダメ、分かった?
「いやー、まさかあのお前がお姫様を抱っこして登校とはな...ついにその気になったか。感動したぞ」
「いや、そういうことじゃないんだが...」
1時間目の授業中、担当の先生が少し遅れるとのことで思わぬ自由時間が出来たのだが、
俺は前の席に座る友人である
「照れるなよ。やっと自分の気持ちに気付いたんだろ? いいことじゃねえか」
「いや、本当に違うんだが」
しかも、どうやら涼はなにを勘違いしているのかさっきからこんなことばっかり言っている。どうやら、周りの奴らも朝の俺とひよりの登校に相当の衝撃を受けたらしく、こちらへと聞き耳を立てているのがひしひし伝わってきた。くっそ、色々とやりづらいな。
「いや、なんかお前が最近桐山さんに積極的に迫ってるのは知ってるから。もう、野上きゅんったら今時ツンデレは流行らないぞ☆」
「よし、ちゃんと一から説明してやるからそれを聞いたらぶん殴らせろ」
「ナチュラルに暴力装置を取ろうとするなっ。暴力反対!」
非常にムカつく言葉遣いでそんなことを言う涼に俺は半分くらい本気でそう返すと、涼がそう声を上げる。
「はぁ、全く...今回はドロップキックで負けといてやるよ。話すから落ち着いて聞いてくれよ?」
「いやいないや、なに大分譲歩しましたよ感出してさっきよりもエグい要求してんの!? というか、普段桐山さんのせいでツッコミ役に回されてるからってここぞとばかりにボケるのやめてくれる? 俺、別にツッコミ役じゃないのよ」
「じゃあ、聞かなくていいのか?気にならないのか?」
「聞くけどもっ、大変気になるけども!」
「しょうがない、じゃあ後でジャーマン・スープレックスな」
「だから、ドンドンと代償をあげるのやめくれる? なに当たり前みたいな顔してエグいこと言ってんの!?」
まぁ、そんなこんなで俺は涼に事情を説明することになるのだった、
*
「なっ、おかしいだろ? 今にも嫌われて縁を切られてもいいはずなのに...」
「いや、おかしいのはお前だっ」
「なんでだよ」
一応、事に至る経緯を大まかに説明したのだが何故かツッコミを受けてしまった。別に今回はボケたつもりはないのだが。
「いや、なんでもなにも明らかに逆効——いや、別にそうでもないか」
「どっちなんだよ」
涼がそこまで言いかけた所でなにかに思い立ったように、突然意見を変えた。
「いや、いいと思うぞ。うん。続けていったらいずれ上手くいくと思う」
「そ、そうか。お前もそう思うか」
先程までは否定していたはず涼が更にそんなことを言う。どうやら、考え直したらしい。良かった。ただ、唯一懸念点をあげるとすれば妙に口元をニヤニヤさせているところだ。
まるで小さな子供がオモチャを見つけたかのような...気にしすぎか?
「よしっ、そうとなればとりあえず今日はひよりの前ではオラオラ系を突き通さないとな」
「おー、頑張れー」
そんなわけで俺は少し不安要素はあるものの涼からのお墨付きも貰ったので、ひよりに嫌われる作戦を続行することに決めるのだった。
*
「本当に今日どうしたの?」
「どうしたって今日の俺はどこか変か?」
「いや、流石にそれで変じゃないは無理があると思う」
なんとか1日オラオラ系を突き通した俺とひよりは下校中そんなことを話していた。
「最近の翔太は私でも予測出来ない行動を取ることが多い...もしかして、なにか隠してる?」
「い、いや、そんなことねぇって」
ひよりの鋭い目に見つめられ俺は思わず目を逸らす。ここでひよりに俺が嫌われようと行動していることがバレたら、今までやってきたことがゼロに返ってしまう、どころかひよりに友達に作らせる手を完全に失うことなってしまう。
それだけは避けねば。なんとか話題をそらさねば。
「というか、そこまで言うってことは今日みたいな俺はひよりは嫌いか?」
「今、完全に認めたよ? 今日の翔太は変だったって自分で認めたよ?」
「どうなんだ?」
「...ズルイ。そんな顔されたら答えるしかなくなる」
ひよりから冷静すぎる指摘を受けたものの聞いていない
「好き。正直、積極的に来てくれて嬉しかった。でも、嫌い」
「どっちなんだよ」
朝にもこんなやりとりバカとしたなと思い返しつつも、俺はツッコミを入れる。わ、分かりづらい。
「だって、今日翔太階段で転びかけた女の子を助けてた」
「そう言えばそんなことあったな」
するとひよりがそう言うので俺も頷く。だが、それとこれとなんの繋がりが?
「その時に翔太がオラオラ系の態度だったせいで女の子の方が顔を真っ赤にしてた」
「いや、それはないだろ」
あの時はひよりと一緒だったからな、なんとかオラオラキャラを維持する必要があって焦ってたからな、俺はその女の子の顔は見ていない。というか見ている余裕がなかった。
とはいえ、俺がそんなことをしたところでそんなリアクションが返ってくるとは到底思えないのだが。
「普段の翔太なら「たまたま助けただけなので。本当に感謝とかいいんで」って感じで冷たく返すから絶対にそんなこと起きないのに。翔太は自分の魅力に気づいていない」
「?? よく、分からないな」
というのに、ひよりはまだ話を続ける。もし、それが本当だったとしてひよりは一体なにを言いたいのだろうか?
「私以外の女の子にアピールしちゃダメ、ってこと。それが嫌だった。だから嫌い。明日からはやめて。分かった?」
「...」
俺がイマイチ意図を読まず困惑していると、ひよりは俺のほっぺたに優しく人差し指で触れると、困ったような怒ったような顔をしてぷぅと軽く頰を膨らませそんなことを言う。
一方の俺はなんと返せばいいのか分からず、ひよりの人差し指にほっぺたを触れられたまま、黙って頷くことしか出来ないのだった。
なんだこの生物。
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次回「幼馴染を助けたので恩着せがましくしてみた!」
ちなみに気づいてる方もいると思いますがこの作品は基本的に1話完結の日常ラブコメなので特にストーリーとかないです。なのでネタ切れたらネタが浮かぶまで放置するつもりでしたが、もしかしたら書かないかもしれないので今脳内にあるストック終わったら完結した方がいいのか、それともネタが浮かんでまた書くかもしれないので放置した方がいいのか、自分自身で整理出来てないです。良かったら皆さんの意見も貰えると幸いです。
最後に良かったら星や応援お願いします、では!
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