第8話
魔装外殻は、不適合者が無理矢理コンパクトを開く為の機構であり、その性能は正規の装着者と比べれば大きく見劣りする。
しかし、魔装外殻が魔装外套より優れている点が一つだけある。
魔装外套による武装の生成は、剣や盾のようなものは作れても、銃などの複雑な機構を持つものは作れない。
対して、魔装外殻は、あらかじめデータを組み込んでおくことで火薬等を含む複雑な概念を生成することができる。
『黒鉄』が魔力を練り上げ、右腕に巨大な円筒状の武装が生成されていく。
円筒は、さらに細い円筒を束ねたような形状をしており、その筒の一つ一つが銃口になっていた。
俗に、ミニガンと呼ばれる代物だ。
通常の武器と違う点は一つ、魔力が尽きない限り弾切れしない。
魔装銃鉄器。
音を立ててそれが回り出す。
銃口から大量の弾丸が溢れて、正面に立つ全てを抉り取っていく。
それはライフルのような点の武器ではなく、広範な面積を削り取る面の武器である。
それが、植物で形作られた男の身体を捉えた。
その破壊力は人の大きさの物質など秒で削り取り溶かしてしまう。
男の身体を散り散りに消し飛ばした後、灯火を拘束していた巨大な触手の束にもその破壊は降り注いだ。
轟音が響く。
数瞬でその巨体は原型を留めなくなり、残ったその残骸を灯火が忌々しげに灰に変えた。
「仕留めたんですか、あいつ」
「いや、本体は別のところだ。これだけ魔力を消費したら、しばらくは出てこないだろうけど」
「知ってるんですか、あれが何者なのか」
「……知っている」
灯火が変身を解く。
それを受けて『黒鉄』が機械からコンパクトを外すと、外殻が淡雪のように溶けていく。
グレーのシャツにカーディガンをすらっとしたスタイルで上品に着こなし、整った顔立ちの目を細めながら柔和に微笑んでいる。
「久しぶりだね、灯火ちゃん」
その優しい、柔らかな笑顔を、灯火は覚えている。
しかし、その瞳の奥は冷たく冷え切っていた。
疲弊し、摩耗し、それでもその笑みを崩さないのは灯火への優しさだろうか。
「話、聞かせてください」
灯火は言った。
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