第7話 中央即応連隊、出動

西暦2030年5月2日 アルノシア公国 首都アルズ 首相官邸


「現状を報告せよ」


 アルズの首相官邸地下にある会議室にて、水野首相は尋ねる。説明を始めたのは公国国防軍の制服組トップである須藤すどう参謀本部長であった。


「まず先日の2200、ベーダ大皇国は大使館を通じて、我が国に対して断交と宣戦布告を通知。同時にモルディア諸島に対して空母機動部隊と揚陸部隊を展開し、強襲上陸を果たしてきました。兵力は推定3千程度ですが、この後に空軍の輸送機を用いてより多くの兵力を展開してきております」


「…」


 水野首相は顔をしかめる。まさか直ぐに武力行使に打って出るとは思ってもみなかったからだ。


「…宣戦布告を叩きつけられた以上、こちらも応戦に入るが…直ちに日本国及びアメリカに対して連絡を入れて下さい。国連総会も流石にベーダの暴挙は見過ごす筈はないでしょう。ラティーニアに対しても、軍事支援を要請。須藤本部長、実働部隊の作戦指揮は任せます」


 国の憲法上のトップはアルノシア公だが、政治のトップは政府首相である。そのため事実上の最高司令官として水野がいるが、陣頭指揮は軍のトップである須藤の手に委ねられる。


 そして近郊の駐屯地では、中央即応連隊の部隊が大急ぎで荷物をまとめていた。


「やっぱり、戦争を仕掛けてきたな…」


 クエンサーはそう呟きながら、大急ぎで荷物をまとめ、出撃準備を進める。そして駐屯地の外へ向かい始める。


「ともかく、先んじてモルディアに向かうぞ!行くぞ!」

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