第6話 モルディア侵攻

西暦2030年5月1日 モルディア諸島東部沖合


 アドラ海の上を、十数隻の艦船が西へ進む。輪形陣の中心にある大型艦の戦闘指揮所CICでは、艦隊指揮官のアブドル提督が席に座りながら報告を受けていた。


「ラーティニア・アルノシア両国は政府からの最後通牒に対し、明確に拒否を示してきました。モルディア諸島ではすでに戦時態勢に入っており、こちら側の動向を警戒している模様です」


 艦長のドレン准将が報告し、アブドルはため息をつく。通商協定において経済的に優位に立つための改訂要求は、最初から拒否される前提で出したものである。よってこうなる事は最初から織り込み済みであった。


「まあいい、我らには実力行使で解決できるだけの戦力がある。直ちに作戦を開始する。後続の揚陸艦に指示を送れ。艦長、直ちに攻撃隊を発艦せよ」


「了解」


 命令を受け、飛行甲板より4機の艦上戦闘機が次々と飛び立つ。同時に後方に位置する揚陸艦からも、大型輸送ヘリコプターが護衛の攻撃ヘリコプターとともに飛び立つ。その全てがフランスやイギリス製のそれであり、どれ程彼の国々から支援を受けているのかが伺えた。

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