カウントダウン(3)
「
リングアナは新参観客向けの解説を交えている。
「順調に勝ち抜いてきたフラワーダンス最大の難関がここで立ちふさがる! 巷を席巻する
(ビビが気合入っているのも当然。だってナクラマー1は四天王の一角。デオ・ガイステと同じリミテッドクラスとは言っても格違いの感があるもの)
エナミも緊張している。
正直に言って弱点を見つけられないでいる。これまでの試合を研究しても隙など微塵もない。負けなしとはいわないが、敗退している相手はことごとくリミテッドクラスという実力が拮抗している中での惜敗ばかり。
(逆に、ここを抜いたら勢いがつくと思う。ツインブレイカーズ撃破に向けた、覇気に満ちた雰囲気ができる。おそらく、最終的にはみんなのパイロットスキル頼り。頑張ってほしい)
選手紹介が続く間に祈りを送る。
「なかなかイケてるじゃん、フラワーダンス」
センタースペースまで進んできて相手のリーダーが話し掛けてくる。
「噂になるくらいの実力はあるのかもね。意表を突くスタイルなのもほんと。ちゃんと自分のものにしてるって、うちのスカウトも絶賛してた。ただし、運がない」
軽い口調で告げてくるのはチームリーダーのチェイン・ガーリラ。こんな調子ではあるがブレードアクションの実力はクロスファイトでも一二を争うと言われている。
「本トーナメントまであと一歩のところで勝てない相手に当たっちゃうとかね」
彼の場合、内容はともかく悪気がないのでヘイトは溜まらないタイプ。
「本当のことを言ってやるなよ、チェイン。人気のスクール生女子チームをけなすとアンチに見舞われるぞ」
「そーそー、天然もほどほどにね」
「あれ? 褒めてたつもりなのに」
そういうところが観客の笑いを誘う。
「この年頃の女は怖いぞ。コミュ力高いから、あっという間に悪者にされちまう」
「そゆこと言うチマこそヤバいー」
「お、マズ」
諌めているのは
もう一人の
後半に発言したのは
(全体に軽佻に感じられるけど、実際はそんなことない。これに油断させられるチームも少なくないのが問題)
分析結果はメンバーに伝えてあるので緩みはないはず。
使用しているアームドスキン『ルーメット』もナクラマー社の誇る最新鋭クロスファイト仕様機である。度々ワークスマシンを乗り換えようとも強さの揺るがない彼らの実力は言わずもがなだ。
「お気になさらず。あたしたちは恨み言を裏で拡散するようなことしませんから」
ビビアンが応じている。
「よろしくね。女の子のファンが減っちゃうとモチベ下がっちゃう」
「たまには痛い目を見るのも悪くなかろう」
「そうかもそうかもー」
軽く流しているのは彼ら特有のメンタルコントロールなのかもしれない。必要以上に緊張しないように。
(本トーナメント出場を決める一戦は誰にとっても大事なはず。プレッシャーを感じてないとは言わせない)
エナミはそう見ている。
フラワーダンスの今の実力を感じ取れば余計に緊張すると思われる。崩せるとしたらそこからだ。
「予想どおりよ、エナ。さすがの分析力」
ビビアンがチーム回線で伝えてくる。
「適当に流して。相手を慌てさせるのはゴングは鳴ってからでいいから」
「言ってくれる。あがっちゃうじゃない」
「作戦どおりにいけば簡単に負けたりはしない。混戦に持ち込んだら勝機はあるよ」
チェインにウルジー、フェレッツェンにユーリィがマッチアップする作戦になっている。勇猛なデモリナスに接近戦は禁物。勢いで持っていかれる可能性が高いのでビビアンが担当。
サリエリ、レイミンは互いのペアをフォローしつつ撃破を狙う。ビビアンの足留めとチェインをウルジーが抑えられるかが勝負の分かれ目。
(ビビもグレイ相手の練習でアゼルナンのブレードアクションに慣れてる。それがなかったら、ちょっとマッチアップに迷うとこだった)
唯一の光明なのだ。
「それでは試合開始の時間です! 両チーム、ゴースタンバイ? エントリ! ファイト!」
試合が始まってメンバーは
「乗ってくるかしら?」
ラヴィアーナも相手が相手だけに不安げだ。
「乗せます。まずはそれからです」
「エナちゃん、頼れるコマンダーに成長したね。指揮ぶりはお見事としかいえないな」
「私を乗せても仕方ありませんよ?」
エナミはジアーノの軽口に軽口で返した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます