カウントダウン(4)
「リィ、左、150」
「はいにゃ!」
エナミの仕事はまずそれぞれの
「捉えた」
「入ったに」
本人かペアの
そこから
「リィ、そこから左は重め。み……、いや後ろに引っ張れる?」
「あいにゃ!」
続く作業はマッピング。索敵ドローンやチーム機ドローンの映像から配置されている
今はサリエリがその様子を確認して狙撃しやすい場所に相手を誘導するようユーリィに指示した。それに従って猫娘は戦闘しつつも移動していく。この段階まで進むとエナミの忙しさは緩和される。
「今のうちに飛ばして目を広げておかないと。ビビ、もうちょっと待ってて」
「だいじょぶ。場所的に軽めのとこに引き入れた」
ウルジー、ユーリィの二人に比べ、移動の多いショートレンジシューターのビビアンはより広い視野が必要である。スティープルの配置が先にわかっているほどに有利になる。
前述の二人は光学ロックしたドローンの映像分析に任せて、ビビアン機周辺のスティープル調査に勤しむ。マッピングした範囲を広げていく。
「ビビ、右方向、ウル戦闘エリア。フォロー入れられる?」
「できれば面白くなりそう。やってみる」
相対位置もそれぞれの索敵パネルに表示されているはずだが、戦闘中は確認しづらい。無作為な交錯を避けさせたり、あえて誘導したりするのも彼女の務めである。
「最接近。一撃入りました」
「はい。避ける。嫌ってる?」
接敵状況はラヴィアーナも見てくれている。
思わぬビビアンからの狙撃にチーム『ナクラマー1』の
(手練れのフェンサーが逃げる? もう詰めに入ってるつもりか、今以上の負担を嫌ってるってこと? 後者だ。前者ならミンから報告来てるはずだもの)
「どうして?」
「すごいよ、ウルちゃん。トップチームのヒーロー相手にこれかい?」
見ればスティック使いのウルジーがチェインを前に善戦している。うなりを上げて回転する鋼棒が斬撃を近寄せない。
振り抜く、突くの動作しかなかった無口娘の攻撃は遥かに進化していた。時折り小さめの衝撃音が走り、チェインのルーメットの手首が跳ねている。
「押してる。びっくり」
「いやー、見入っちゃいますよ」
気づけばウルジーのマッチアップが注目を浴びていた。観客は歓声を上げつつ夢中で応援している。格違いのはずの戦闘が最大の盛り上がりを見せていた。
「ビビ、余裕ある? ウルのフォローしないと」
「ラジャ! 外して」
直感的に危険を察知する。相手の
(ミュウたちによくやられた。押してるなと思ってるところへ飛び込まれてペースを持っていかれる)
幾度も経験した。
スティープル検索にまわしていたドローンを一基、チェインの
「ウル、右!」
「ほい」
スティックが地面を叩いてバックステップ。そこをビームが通過していった。間一髪というところである。
「今の躱しちゃう? ちょっと侮れないなぁ」
「うちのコマンダーは優秀」
誘いを掛けて取ったと思った場面だったらしい。それを回避され、思わず苦言がもれたのだろう。
(動かされてる? 違う。ウルに手こずってるからこそ今みたいな作戦しかなかったのね。簡単に誘導できるようなら
チェインが単独でウルジーを下せると判断したら、ビビアン相手に苦戦しているデモリナスのフォローにシーヴァをまわすだろう。それをしなかったのは彼に余裕がなかったから。
「グレイ君相手にあれだけ特訓してたんですものね。ウルは本当に強くなったわ」
「いいねぇ。本当にいいチームに仕上がってきましたねぇ」
ジアーノは感動している。
(ブレードの間合いもグレイ相手に完全に把握したかもだけど、間合い操作はミュウとの訓練が大きく影響してるみたい)
肝心なのは自分の間合いで戦うことである。スティック使いの彼女の間合いを指導できる者はいない。だが、間合いを自在に操るミュッセルの動きから会得したものだと思われる。
(ここから崩れるかも。リーダーから落とせるとほんとに勝ちが見えてくる)
エナミは胸の底から湧きあがってくる興奮をどうにか抑えた。
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