第149話 そういう家系③
俺は保健室で怪我の処置をして、文化祭の終わり時間まで休み、閉会式やホームルームの前には、素直に早退した。
学校の方でやることが残っている美月達はともかく…ついでに、湊さんと父さんは
俺は凛月と紗月さんに連れられて、傷の様子を見るのに病院を経由してから間宮宅へと帰宅した。
最早ここに来る事を帰宅と言って良いのか、俺には分からないが。
「…で、真。一つ聞きたいんだけど」
「……ん?」
「………あの…中村さん?って人、結局何だったの?」
「んー…俺と同じ質、かな」
「もう少し分かりやすく」
これ以上ない位に分かりやすく言ったつもりなのだが…。
「…真緒さんにとって、二ノ宮は兄貴、湊さんは弟って立ち位置になるんだけど…って、この辺の話は大体知ってるか…」
さてどう説明したものか。俺も父さんが調べた事を日を跨ぎながら聞かされた物だから頭の中で整理するのに少し時間を要した。
「あー…だからつまりな?何でか知らないけど、大学で好きだった人…二ノ宮が自分の兄貴だって気付いたんだよ、あの人。しかも、大学出て海外行って…やっと戻って来たと思ったら…自分の
そもそも、最初は義兄が好きだった。
だがその義兄とは自分の双子の妹が結婚した。
大学で好きになった人は異母兄だった、しかも家を出て行った義姉と結婚する。
形は違えど、好きな人はいつも兄であり、自分の姉妹に横から盗られる様な形で、自分だけは結ばれる事なく放置させられた…と。
そりゃ、感情がぐちゃぐちゃになるのも無理は無いだろう。
結局真緒さんは、双子の妹が結婚した義兄ではなく、義姉が結婚した異母兄へと意識が向いた。
……と言う話をしていくと、凛月も……ではなく、それよりも先に紗月さんが気付いた
「…距離の近い身内に惹かれるのは、確かに真と似ていますね」
「えっ?あぁ〜…そっか、一応私も身内だっけ…」
そう、だから…俺と同じ質な訳だ。
境遇が似てるとまではいかないが…。
「二ノ宮は幼少の頃は母親と二人だったし、湊さんはそもそも家族との繋がりが薄かった。俺も母さんしか居なかったけど…実際は、血縁的に近い人たちとばかり関わって生活してた。ある意味、身内との関わりは少なく無かったんだよ、巡り巡って義兄やら異母兄やらと出会う事になった、真緒さんとは違うようで、結構似てるんだ」
彼女に「恵まれた環境」という皮肉が通用するのはそういう事だ。
家族という存在にコンプレックスを抱いていたのは、俺もあの人も同じこと、それ故か血縁的に近い人に不思議と惹かれる事になる。
ある意味で、そう言う運命なのかも知れない。
「…そっちは、まあ分かったよ。じゃあ、もう一つ聞かせて?」
「えっ、あと何?」
突然、凛月の表情からすっ…と感情が消えた。
「………中村さんがその気だったら、殺されるつもりだったって、どういう事?」
「…言葉の通りだけど……」
「真は、死にたいって思ってたの?」
「……そう思ったことが無いって言ったら、嘘にはなるかな…」
ただ、実はと言うとそれだけじゃない。俺は十中八九殺されないだろうと思っていた。
「…それに、真緒さんが色々と嫉妬で狂ったのにはもう一個理由があって……それは、ちょっと無視出来なかったんだ」
「……それと真に何の関係があるわけ?」
「真緒さんって、美月と似てるんだ。双子の姉で、子供が産めない体質で、妹が自分の好きな人と結婚する事になってるとか…」
「……それは………似てる、というより…」
紗月さんのつぶやきに、俺は頷いた。
真緒さんが強い嫉妬に支配されて行動した理由はそれだ。
「まあ、ほぼ同じですね。今まで真緒さんって、夏芽姉さんとクロエ…つまり子どもの方には手をかけて来なかったんだ。多分、本人の中では色々葛藤みたいなのがあったんだと思う」
どちらにせよ、親の方に手をかけているのだから葛藤も何も遅いのだが…。
父さんから話を聞いて、正直なところゾッとしたのだ。
美月も、彼女と似たような事になるんじゃ無いのか…と。そしてその場合、彼女の好きな人は俺だ。
真緒さん以上に一途で、嫉妬もしやすい質だから余計に、恐怖を覚えた。
だから、案外紗月さんの提案と言うのは、ファインプレーと言ってよかった。
…ということを二人に話すと、やはりというか何と言うか微妙としか言いようの無い、絶妙な表情をしていた。
……一番怖いのは、それを本人に知られる事なく調べて俺に伝えてきた父さんの調査能力だが。
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