第100話 家族と家族
湯船に浸かって、ホッと息を漏らしたあと。
凛月はさっきの話の続きを口にした。
「…だからさ、私は本気で真のことを愛してるって言えるんだけど…。恋してるかって話になるとなんか違うと思うんだよね。勿論独占欲みたいなのはあるよ?他の子と話してたりするのを見ると、良いなあ私も構って欲しいなって思うもん。でも、それより先に“真が友達と話してる”ってところに嬉しくなっちゃうんだよね」
「……それで言うと、俺は他の男が凛月とか美月と話してたら、先に嫉妬が出るかもな。すぐに考え直すけど」
「なら、それは恋心の方が近いって事なんじゃない?多分だけど」
そうなんだろうか?
それは良いけど、なんの恥ずかしげも無く「愛してる」とか、そう言い切れるの本当に凄いと思う。
「…ならさ、俺が美月に告白されたって言ったらどうする?」
「え、普通にダメだよ?例え真でも、みつはあげられません」
ごく自然なトーン、笑顔で凛月はそう言った。
「…俺がしたんじゃねえって」
「だから、YESって答えるのはダメ。選択肢は、いいえかNOかごめんなさいの三択なの。なんて答えたの?」
「……告白遮って逆ギレして八つ当たりしました…」
「喜んで、と言わなかっただけ、私は許しましょう。相当不安定な精神状態じゃないと、真はそんな事しないもんね。実際ここの所はずっと不安定だろうし」
否定はできない。
心が不安定なのは自覚がある。
それはそうと凛月が真っ向から拒否してくるとは思ってなかった。
「…凛月は、俺が美月と付き合うのは嫌なのか」
「真が誰と付き合っても私は応援するよ?でもみつはダメ。私達何だかんだ幼馴染みだけど、実際は従姉弟だもん…。私達って家族でしょ?」
しばらく言われた言葉の意味が分からなくて、自分だけ時間が止まったかのような感覚に陥った。
「…そう、なのか…?」
「えっ、そうでしょ。寧ろ私は小さい頃からその気持ちだったんだよ」
「……だからか、さっき紗月さんっぽいなって思ったの」
「…雰囲気の話?」
「うん。あの人のおかげで大分救われたと思ってる。美月に八つ当たりみたいな言い方したのも、正直それがあったからだし…」
あの日の事を思い出しながらそう言うと、凛月はチャプチャプと嬉しそうに傍に寄ってきた。
俺がわざわざ端っこに行ったのを分かっててなぜ来るんだ。
「お母さんは私達にはそういう事あっても話してくれないからさ〜…。ふふっ、真がそんな事を言う日が来るとは思わなかったな」
「…いやまあ、母さんって呼んで良い…みたいに言われたときは流石に断ったけどさ」
「あ、それはダメだよ。お母さんをお母さんって呼ぶのは私達の特権みたいな物だもん」
「お前家族愛はしっかりしてるよな…」
「もちろん。だから、同じくらい真のことも想ってるんだよ」
「……それは嬉しいんだけどさ…。取り敢えず離れてくれ。密着しないで」
凛月は小さく笑って「はーい」と素直に返事をした。
離れていく姿を目に入れない様に顔を背けた時、一瞬チクッと首筋に痛みを感じた気がした。
「…?」
「さっきも言ったけど、私だって独占したい時はあるから。真は一人だけに傾倒出来る日はくるのかな〜…」
「…ちょっと待って、それどういう意味だよ?」
「言葉の通りだよ」
くすっと笑って、今度はちゃんと前を隠して湯船から上がって行った。
「………あいつキスマーク付けて出ていったな…?」
上がり際にのぼせてるんじゃないかって程に顔が赤くなっていたのを見逃さなかった。
結局一緒に風呂入るのはめっちゃ恥ずかしかったんだろうし、独占欲が云々も本音なのだろう。
それはそうと、やり過ぎたとも思ってそうだ。
「…まあ、美月よりはマシかな」
凛月はちゃんと限度があるからね、美月は俺に関してはマジで限度が無いからな…。
「………謝んないとな」
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